2024年03月22日掲載

BOOK REVIEW - 『部下との対話が上手なマネジャーは観察から始める ポリヴェーガル理論で知る心の距離の縮め方』

白井剛司 著/八谷隆之、吉里恒昭 監修
株式会社ロッカン(ROKKAN)代表/株式会社D・M・W 
四六判/304ページ/1800円+税/日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 一緒に働くメンバーの心のケアは、業務を円滑に遂行するために欠かせない。特に、マネジャーがメンバーの心の状態を理解する必要性は、年々高まり続けている。そのような中、本書では、自律神経の働きに着目することで、自己と他者の感情や思考を読み取るメソッドを提示している。16年間、大手広告会社で人材開発部門に携わり、HRBPとして事業部支援も経験してきた筆者が導き出したのが、心身の「観察」という手法であり、部下の内省支援や対話に観察を組み合わせることで、安心して仕事を進める環境づくりができるというのが本書の主張である。

■ 本書は全8章構成。第1章では現代のマネジャーが置かれている環境を踏まえて「観察」の重要性を説明し、第2章では本書の基盤となる「ポリヴェーガル理論」を取り上げる。この理論は、自律神経の働きが三種類あるとし、赤・青・緑の「三色のモード」に分けて説明している。続く第3~6章は、三色のモードに加え、ブレンドされるモードの特徴やそのモードに入った際の対処法などを解説する。第7章は応用編として、部下育成やチームづくりにおいて三色のモードをどう活用するかを述べ、第8章では観察力を向上させるためのマインドフルネスの実践方法を具体的に紹介している。

■ 各モードの解説部分では、架空の登場人物による具体的なシチュエーションが紹介されており、それぞれの人物がどのようなモードに陥っているのかが直感的に理解しやすい。また、彼らの身体反応や感情・思考を追体験した上で、そのモードの対処方法を知ることができる。自律神経の働きを手掛かりとするのは、なじみのない考え方かもしれないが、一読すればビジネスのあらゆる場面で生きるアプローチだと気づくだろう。マネジャーのみならず、周囲のメンバーとの対話に悩むビジネスパーソンは、ぜひ本書を活用していただきたい。

部下との対話が上手なマネジャーは観察から始める ポリヴェーガル理論で知る心の距離の縮め方

内容紹介
身体・思考・感情を観察すると見えてくる、本当の心――。

「真っ赤な顔で怒る」部下も
「顔面蒼白で固まる」部下も
ただただ、安心したい。

本書は、マネジャーの、自他への「観察力」を高めることで、この負のループを断ち切る方法を解説します。具体的には、マネジャーが、自律神経系の理論である「ポリヴェーガル理論」を知り、それを基に自分と他者の観察と調整ができるようになることで、精神的な余裕を取り戻し、どんなに疲れていても相手の状況を慮りながらも言うべきことを伝える対話ができたり、安心してチームで仕事を進める環境をつくり出すことが可能になります。