代表 寺澤康介
(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)
ProFuture代表の寺澤です。
新卒のスカウトサービスを展開する株式会社ABABAが、1月31日~2月9日、2024年度卒業予定の学生を対象に、“志望度の高い企業から不採用通知(お祈りメール)を受け取った時の感情に関する調査”を実施し、3月1日にその結果を発表しました(有効回答数300人)。それによると、就活生の89%が志望度の高い企業の選考で不採用になった経験があり、そのうち97%が不採用の連絡をメールで受け取ったことがあるとしています。不採用通知の連絡について「形式的で冷たい」と感じている学生が多く、中には、“自分の名前が記載されていない一斉配信のメール”であることに対して悲しみを表す声もあります。また、不採用通知を受け取った学生の85%がそれをきっかけに「その企業を嫌いになった」と回答しています。このうち、43%が“その企業の製品やサービスを今後使わない”、23%が“その企業の製品やサービスを周りにおすすめしない”と回答しています。不採用とされた企業に嫌悪感を示す学生の実に3人に2人が、その企業の製品やサービスについてもネガティブな感情を抱くようになってしまうという恐るべき結果となっています。
一方、不採用メールを受け取った学生の10%が、「その企業を好きになった」と回答していることにも注目すべきです。このような学生からは、“結果的に落ちたけど、選考で出会った面接官がみんないい人だったから今も好き”といった声も聞かれます。また、不採用通知の連絡で「温かさ」を感じたとする学生からは、“人事が個別に応援メッセージをくれて励ましてくれた”“私が面接で話した内容が書かれていて、覚えていてくれたことが嬉しかった”などの評価が寄せられています。書類選考や1次選考のように大量に不合格者が出てしまう場合は難しいかもしれませんが、少なくとも最終面接にまで残った学生に対しては、お祈りメール1本で済まさず、学生に真摯に向き合った温かい対応をしてあげてほしいものです。
「内定者充足率7割以上」の企業が7割
さて、今回は、HR総研が企業の採用担当者を対象に実施した「2025年新卒採用動向調査」(2024年3月4~19日)の結果をお届けします。ぜひ参考にしてください。
まず、本題の2025年卒採用に進む前に、2024年4月入社の採用計画における内定者充足率について見てみましょう。全体では、計画数を達成した割合が「100%以上」の企業は26%で、本稿で1月に報告した12月調査(以下、前回) からはわずか1ポイントの増加にとどまりました[図表1]。また、「90~100%未満」が19%(12月調査から1ポイント減)、「80~90%未満」が14%(同3ポイント増)、「70~80%未満」が10%(同2ポイント増)となり、これらを合計した「採用計画数に対して7割以上」は69%とほぼ7割になりました。12月調査時点では、従業員規模を問わず約半数の企業が採用活動を続けると報告され、この3カ月間での採用活動の進展が示唆されています。一方、内定者が1人もいない「0%」の企業は前回と同じく10%で変化はありませんでした。
従業員規模別に見ると、1001名以上の大企業では、「100%以上」と「90~100%未満」を合わせた「採用計画数に対して9割以上」の割合が前回の59%から62%へと3ポイント増加しました。301~1000名の中堅企業では、前回最多だった「90~100%未満」よりも「100%以上」が5ポイント増の22%となり、採用活動の進展の跡が見られます。また、300名以下の中小企業では、「100%以上」は33%で変化はなかったものの、「採用計画数に対して7割以上」の割合が前回から14ポイント増の66%に増加し、採用活動の進展がうかがえます。
[図表1]2024年4月入社の採用計画に対する内定者充足率
資料出所:HR総研「2025年新卒採用動向調査」(2024年3月、以下図表も同じ)
次に、3月時点での内定者充足率を前年と比較してみましょう。全体では、「ほぼ変化なし」が61%で最も多く、「大きく向上した」と「やや向上した」を合わせた“向上した”派が19%、「大きく低下した」と「やや低下した」を合わせた“低下した”派が20%で拮抗しています[図表2]。従業員規模別に見ると、中堅企業では“向上した”派が12%で、“低下した”派が25%と、“低下した”派のほうが13ポイント多いのですが、中小企業では逆に“向上した”派のほうが4ポイント多い傾向が見られます。一般的には、中小企業の採用難が話題にされますが、中堅企業も採用活動に苦戦している状況がうかがえます。
[図表2]2024年卒採用の内定者充足率の前年比較
採用活動予算は拡大傾向
ここからは、2025年卒採用の動向について詳しく見ていきましょう。まず、2025年4月入社の採用計画人数について前年比較の結果を紹介します。一部の企業が「未定」と回答していますが、どの従業員規模でも「前年並み」が最も多く、全体の5~6割台に上ります[図表3]。また、「増やす」と回答した割合と「減らす」と回答した割合を比べると、大企業では21ポイント、中堅企業でも19ポイント、「増やす」が「減らす」を上回っています。これまでの調査結果からも、採用活動の早期化が進んでいることが明らかであり、その背景を裏付ける採用意欲の高さを示す結果となっています。
[図表3]2025年4月入社の採用計画人数の前年比較
一方、中小企業でも「増やす」が「減らす」を上回っていますが、その差はわずか3ポイントにとどまり、大企業や中堅企業ほどの採用意欲の高さは見られません。連合(日本労働組合総連合会)のデータによれば、2024年春闘における平均賃上げ率は、1000人以上の大企業が5.28%、300人未満の中小企業でも4.69%(4月2日第3回集計時点)と、双方において前年同期を大幅に上回っています。しかし、中小企業では、業績改善に伴う「前向きな賃上げ」よりも、「防衛的な賃上げ」として、業績改善を伴わない、人材確保のために賃上げが行われるケースのほうが多いと指摘されています。したがって、新卒の採用計画人数の増減を見る限り、中小企業における業績改善の遅れが推測されます。
次に、採用計画人数を増やす企業が2割以上となる中、採用活動に伴う予算について見ていきましょう。採用広報やインターンシップ、セミナー・説明会、選考活動、内定者フォロー、移動費など、採用に関わる総予算について、前年との比較を行いました。全体では、64%が「ほぼ変わらない」と回答し、次いで「やや増える見込み(20%未満)」が25%、「かなり増える見込み(20%以上)」が6%となっています。これらを合わせた“増える”派は31%で、「やや減る見込み(20%未満)」と「かなり減る見込み(20%以上)」を合わせた“減る”派は4%にとどまりました[図表4]。従業員規模別に見ても、各規模で“増える”派が“減る”派を大きく上回っています。特に中堅企業では、“増える”派が41%と4割を超え、[図表3]における“採用計画人数を増やす”企業割合(29%)を10ポイント以上も上回り、予算が増加しているのは採用計画人数が増えた企業にとどまらないことが分かります。
[図表4]2025年卒採用の活動予算の前年比較
最大の課題は「ターゲット層の応募者集め」
次に、2025年卒採用における課題について見ていきましょう。[図表5]によれば、「ターゲット層の応募者を集めたい」が全体で最も多くの企業で選ばれ、51%と半数を超えています。次に、「応募者の数を集めたい」と「内定辞退者を減らしたい」がともに31%、「大学との関係を強化したい」が29%でした。
[図表5]2025年卒採用における課題(複数回答、回答割合10%以上の項目を抜粋)
従業員規模別に見ると、各規模とも「ターゲット層の応募者を集めたい」が4~6割で最も多い一方、大企業では「内定辞退者を減らしたい」が41%で、「応募者の数を集めたい」(28%)よりも13ポイント高い2位となり、「採用方法を見直したい」は8%と他の規模よりも低い傾向です。中堅企業では、「内定辞退者を減らしたい」が大企業とほぼ同じ40%と高く、「応募者の数を集めたい」(38%)と「大学との関係を強化したい」(35%)も他の規模よりも高い傾向が見られます。また、「面接官のスキルを高めたい」(28%)、「セミナーの内容を魅力的にしたい」(25%)も他の規模より顕著に高くなっています。一方、中小企業では「内定辞退者を減らしたい」は19%と相対的に低く、「大学との関係を強化したい」(30%)や「採用方法を見直したい」(25%)などのほうが高くなっています。この結果は、内定を出す段階よりも前の母集団形成の段階での課題が、中小企業にとって重要であることを示唆しています。
2025年卒採用においては、「ターゲット層の応募者を集めたい」が第一の課題であることが分かりました。では、実際にはどの程度の応募者が集まっているのでしょうか。ターゲット層における、目標とする応募者数に対する実際の応募者数(プレエントリー数)割合を見ると、「100%以上」は大企業でも20%にとどまり、中堅企業16%、中小企業10%と、規模が小さくなるほど目標には達していない企業が多いことが分かります[図表6]。さらに、「80~100%未満」を加えた「目標人数の80%以上」では、大企業の45%に対して、中堅企業16%、中小企業17%と、大企業との差が広がっています。目標人数を大きく下回る「0~10%未満」を見ると、大企業の8%に対して、中堅企業26%、中小企業に至っては51%という結果になります。広く応募者を集めるだけでも大変な時代に、中小企業において「ターゲット層の応募者を集める」ことがいかに難しい状況となっているかをうかがい知ることができます。
[図表6]2025年卒採用におけるターゲット層の応募状況(目標人数に対する割合)
「自社採用ホームページ」と「自社セミナー・説明会」を重要視
コロナ禍からの業績回復に伴い、優秀な学生を獲得する競争がますます激しくなっています。2025年卒採用でより重要になると思われる施策を尋ね(複数回答)、結果を従業員規模別に上位7項目示したものが[図表7]です。やや順位に差がありますが、「自社採用ホームページ」(大企業1位、中堅企業・中小企業2位)と「自社セミナー・説明会」(大企業3位、中堅企業・中小企業ともに1位)の二つの施策については、すべての規模で30%以上となっており、認識が共通していることがうかがえます。採用活動の早期化に伴い、時期的、あるいは掲載内容的に制約のある「就職ナビ」に過度な依存をするのではなく、他社との差別化を図るために「自社採用ホームページ」でのインターンシップ募集やプレエントリー受け付け、企業・仕事への理解を促進させる動画コンテンツの掲載などに注力する動きが見られます。また、「自社セミナー・説明会」でも、オンラインから対面型への回帰が見られる中、より独自性のあるプログラムを提供する必要性が高まっています。
[図表7]2025年卒採用でより重要になると思われる施策(複数回答、従業員規模別)
[注]割合が同率の項目については同順位。
従業員規模ごとの違いを見ると、大企業と中堅企業では両方とも「対面型インターンシップ」が33%となっていますが、中小企業では19%と差があります。この動きは、インターンシップにおいても対面型へ回帰が進む中、中小企業ではもともと対面型を採用しているケースが多い傾向にある一方、大企業・中堅企業はオンラインから対面型への移行や併用を模索していることを示唆しています。また、[図表5]でも取り上げたように、大企業や中堅企業では「内定辞退者を減らしたい」が重要課題とされ、「内定者フォロー」が課題となっている一方、中小企業では上位にはランクインしていません。
また、すべての規模で「学内企業セミナー」が7位にランクインしていますが、中堅企業・中小企業では「キャリアセンターとの関係強化」(各30%・19%)もランクインし、大企業でもランクインこそしていないものの18%と2割近くが重要視しています。同結果は、最重要課題である“ターゲット層の応募者確保”のために、大学ルートの活用が再評価されていることを示唆しています。
「ターゲット層の応募者を集める」施策の一環として、大学ルートの活用とともに近年注目されているのが「ダイレクトソーシング」※です。「ダイレクトソーシング」を行っていると回答した企業に対し、その実施内容を尋ねたところ(複数回答)、全体では「逆求人サイトの活用」が64%で最も多く、次いで「社員からの紹介」(55%)、「内定者からの紹介」(34%)といったリファラル採用が挙げられました[図表8]。
※ 企業が優秀な人材を獲得するために自ら求職者に接触し、積極的・能動的に採用活動を行う手法。「ダイレクトリクルーティング」ともいう。
[図表8]2025年卒採用におけるダイレクトソーシングの実施内容(複数回答)
従業員規模ごとの違いを見ると、「逆求人サイトの活用」については、大企業の47%に対し、中堅企業と中小企業ではそれぞれ75%、73%と高い割合となっています。また、「社員からの紹介」は、大企業で65%、中堅企業で50%、中小企業で47%と、大企業での実施率が最も高くなっています。また、「内定者からの紹介」については、大企業と中堅企業ではそれぞれ47%、42%と4割台となる一方、中小企業では13%と実施率が低い傾向にあります。これは、内定者が少ない中小企業では、「内定者からの紹介」に頼ってしまうと、内定者の出身校に偏りが生じる可能性があることを示唆しています。
また、大企業では、他の規模の企業では1割に満たない「SNSの活用」が29%と3割近くに上ります。「SNSの活用」はそれなりに手間のかかる手法でもあり、人的リソースに余裕のない中堅企業・中小企業では、そこまで手が回らないといった実状も推測されます。
インターンシップの参加者獲得でも苦戦する中小企業
インターンシップについても考察してみましょう。まず、2025年卒採用に向けたインターンシップの実施状況について、全体では「前年は実施していないが、今年は実施した」と「前年同様に実施した」を合計した“実施した”が64%となっています[図表9]。従業員規模別に見ると、大企業ではこの割合が85%達し、「前年は実施したが、今年は実施していない」と回答した企業は皆無でした。中堅企業・中小企業における“実施した”とする割合は、それぞれ68%、49%と大企業を下回り、例年と同じく従業員規模による差が明確に表れています。
[図表9]2025年卒採用に向けたインターンシップの実施状況
「前年は実施していないが、今年は実施した」と「前年は実施したが、今年は実施していない」の割合を比較すると、後者の割合は非常に少なく、実施企業数は年々増加していることが分かります。こうした状況下で、各企業は十分な参加者を集めることができているのでしょうか。前年と比較したインターンシップ参加者数を尋ねたところ、全体では「前年並み」が68%と7割近くを占める一方、「前年より多い(参加者が2倍以上)」が3%、「前年より多い(参加者が2倍未満)」が18%で、合わせて21%の企業は“前年より多い”と回答しています[図表10]。一方、「前年より少ない(参加者が5割以上)」と「前年より少ない(参加者が5割未満)」を合わせた“前年より少ない”は12%で、“前年より多い”が10ポイント近く高くなっています。
[図表10]2025年卒採用に向けたインターンシップ参加者数の前年比較
従業員規模別に見ると、大企業では“前年より多い”が23%であるのに対し、“前年より少ない”はわずか3%で、“前年より多い”が大きく上回っています。中堅企業では“前年より多い”が大企業よりもやや高い25%である一方、“前年より少ない”も17%と高く、その差は大企業ほどではありません。他方、中小企業では“前年より多い”企業も13%ありますが、“前年より少ない”とする割合(17%)がそれを上回っています。つまり、採用活動のファーストステップともいえるインターンシップの参加者集めの段階で、既に従業員規模による明暗が分かれていることが分かります。
復活基調の「大学ルートの活用」
次に、コロナ禍の数年間は一時的に下火となっていましたが、[図表7]で見た“重要になると思われる施策”の中で、すべての従業員規模で注目されている「学内企業セミナー」について見ていきましょう。2025年卒採用に向けた学内企業セミナーへの参加大学数について、「減らす」と回答した企業は皆無でした[図表11]。また、「増やす」と回答した割合は、中堅企業で11%、大企業と中小企業ではそれぞれ22%、23%と2割以上に上っています。
[図表11]2025年卒採用に向けた学内企業セミナー参加大学数の前年比較
[注]「減らす」という回答はなかった。
また、学内企業セミナーに代表される「大学ルートの活用」に関連するもう一つの施策として「理系研究室訪問」の実施状況も確認しましょう。全体では、「前年は実施していないが、今年は実施した(実施する予定)」(6%)と「前年同様に実施した(実施する予定)」(44%)を合わせると、ちょうど半数の企業が“実施した(実施する予定)”と回答しています[図表12]。「前年は実施したが、今年は実施しない」は3%であり、これを「前年は実施していないが、今年は実施した(実施する予定)」(6%)のほうが上回りますので、理系研究室訪問の実施企業は前年よりも増加していることが分かります。
[図表12]2025年卒採用に向けた理系研究室訪問の実施状況
従業員規模別に見ても、すべての規模で「前年は実施していないが、今年は実施した(実施する予定)」が「前年は実施したが、今年は実施しない」を上回り、復活の兆しを見せています。ただし、“実施した(実施する予定)”は大企業で67%に達する一方、中堅企業では51%、中小企業では38%と、従業員規模が小さいほど割合が低下傾向にあります。理系研究室訪問は、一つの大学内で複数の研究室を訪れることが一般的であり、キャリアセンター訪問よりもさらに手間と時間を要する施策です。また、研究室訪問の成果として期待されることは、教授からの推薦や当該研究室の学生からの自由応募ですが、理系採用は文系以上に獲得競争が激しいため、中小企業ではなかなか成果が得られにくいという背景も考えられます。
「2023年9月」にセミナーのピークを迎えた大企業
次に、プレエントリー数の前年比較の結果を見てみましょう。全体では「前年並み」が66%で半数以上を占めます[図表13]。一方、「前年同時期より多い」(8%)は、「前年同時期より少ない」(25%)の約3分の1にとどまります。
[図表13]2025年卒採用のプレエントリー数の前年比較
従業員規模別に見ると、唯一、大企業では「前年同時期より多い」が「前年同時期より少ない」をわずかに上回りますが、その差は3ポイントしかなく、「前年同時期より多い」と回答した割合の13%は中堅企業と同じであり、“前年より多い”とする割合が23%あったインターンシップの参加者数([図表10]参照)とは様相が異なります。中堅企業・中小企業では、「前年同時期より少ない」がいずれも3割以上であり、「前年同時期より多い」を20ポイント以上上回るなど、母集団の形成段階で苦労している様子がうかがえます。インターンシップ参加者を対象とした早期選考を実施している企業の中には、プレエントリーを改めて求めないケースがあることを考慮したとしても、特に中堅企業・中小企業にとっては厳しい状況であると推測されます。
最後に、個別企業セミナー・説明会について、まずは[図表14]で開催時期(複数回答)の従業員規模別の結果を見てみましょう。
大企業では「2023年6月以前」が33%となるなど、早期から開催するところが多く、2023年「9月」には41%と開催のピークを迎えています。就活ルールで会社説明会が解禁となる2024年「3月」は28%にとどまり、同年「2月」の33%を下回るとともに、ピークの2023年「9月」を除く同年「7月」から「2024年1月」までの23~26%とさほど変わらない割合となっています。2024年「4月」以降は2割を下回る見込みです。
中堅企業では、「2023年6月以前」は15%ですが、その後は20%以上が続き、「2024年1月」に33%で3割台、2024年「2月」に43%で4割台となり、ピークの同年「3月」には48%と5割近くに達します。同年「4月」以降は徐々に低下していきますが、同年「7月以降」も20%をキープしています。
一方、中小企業では、2023年内は「10月」に1度だけ13%で1割台となるものの、「2023年6月以前」から2023年「12月」まで1割未満となり、「2024年1月」になってようやく1割台となり、個別企業セミナー・説明会の開催が本格化し始めます。2024年「3月」に34%でピークに達し、同年「4月」も31%と3割台をキープ、同年「5月」以降も2割前後となる見込みです。大企業の会社説明会が落ち着くのを待つかのように、採用活動が本格化する形となっています。中小企業では「セミナー・説明会の開催なし」が30%に達していることも特徴です。
[図表14]2025年卒採用の個別企業セミナー・説明会の開催時期(複数回答、従業員規模別)
次に、個別企業セミナー・説明会の開催形式について見てみましょう[図表15]。コロナ禍が落ち着くのに合わせて、オンライン形式から対面形式への揺り戻しが起こっているといわれていますが、全体では53%と過半数が「対面形式とオンライン形式の両方を実施」しています。これに「すべてオンライン形式で実施」が26%で続きますが、「すべて対面形式で実施」の22%と大きな差はありません。
続いて従業員規模による違いを見ておきましょう。大企業では、「対面形式とオンライン形式の両方を実施」が73%と圧倒的多数であり、時期や内容により対面形式とオンライン形式を使い分けていることがうかがえます。「すべて対面形式で実施」は14%にとどまりますが、一方の「すべてオンライン形式で実施」も同割合となっており、コロナ禍には「すべてオンライン形式で実施」に大きく舵を切った大企業の方向転換の傾向が顕著に表れています。
[図表15]2025年卒採用の個別企業セミナー・説明会の開催形式
中堅企業では、「対面形式とオンライン形式の両方を実施」が53%で最多となっています。「すべて対面形式で実施」は12%にとどまる一方、「すべてオンライン形式で実施」が35%と3分の1以上を占め、大企業を上回っています。
中小企業では、「すべて対面形式で実施」が36%で他の規模を大きく上回るとともに、「対面形式とオンライン形式の両方を実施」もこれと同割合となっています。中小企業というと“対面形式”が主流というイメージがありますが、「すべてオンライン形式で実施」も29%と3割近くあります。なお、「対面形式とオンライン形式の両方を実施」について、従業員規模が小さいほど割合が低くなっていますが、これは特に中小企業の場合、セミナー・説明会のプログラム自体を幾つも用意しているわけでなく、一つ・二つ程度のメニューを繰り返し実施しているケースが多いためと推測されます。
次回は、今回の続きと合わせて、就活生を対象に実施した「2025年卒学生の就職活動動向調査」の結果もご紹介します。
寺澤 康介 てらざわ こうすけ ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長 1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。 著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。 https://www.hrpro.co.jp/ |