インストラクショナルデザイナー
A5判/160ページ/1500円+税/プレジデント社
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 人的資本経営への関心が高まる昨今において、いかにして社員を育成し、組織の生産性を高め、事業目標に向けてパフォーマンスを発揮してもらうかは、多くの企業の悩みの種であろう。一方で、多大なコストと時間をかけて研修を実施したとして、受講者から「普段の業務に結び付かず時間が無駄になった」といった意見ばかり出るようでは、企業の研修担当も浮かばれない。本書では、そのような現状を解決する効果的な手法として、欧米では当然のように用いられている「インストラクショナルデザイン」(研修設計学。以下、ID)の各種理論を紹介する。
■ Chapter1では、ビジネスゴールから逆算して研修を実施することの重要性を説き、それを具体化するための設計手法としてHPIとIDに触れる。HPIとはHuman Performance Improvementの略で、「組織の経営課題を人材の視点から解決していく方法」を意味し、IDの上位概念とされる。Chapter2では、まずこのHPIを取り上げ、ビジネスゴールを実現するために必要な「行動の質」(パフォーマンスゴール)を言語化することの重要性を説く。IDでも重要となる「ルーブリック」というパフォーマンスゴールを測定するための手法が、営業メンバーの商談スキル評価を例として、分かりやすく説明されている。
■ Chapter3では、IDの基本的な理論や手法を詳述。Part1でHPIとIDの関係に触れた後、Part2~3では研修設計に活用できる理論や、研修プログラム内の「評価」の活用方法を取り上げる。さらにPart4では、研修後の効果検証に寄与する理論を解説する。Chapter4では、 “ハイパフォーマーの短期育成” など、IDの考え方を取り入れて育成に成功した3社の事例を紹介。Chapter5では、著者と日本におけるIDの第一人者の対談も収録している。IDは耳慣れない理論と思われるが、だからこそ育成に携わる者には示唆に富む内容となるであろう。本書を活用し、経営戦略と教育戦略を連動させるイメージを具体化させていただきたい。
成果から逆算する“評価中心”の研修設計 インストラクショナルデザイン 内容紹介 成果から逆算する評価中心の研修設計、インストラクショナルデザイン(ID)。 武蔵野大学響学開発センターの教授であり、センター長であるインストラクショナルデザインの第一人者、鈴木克明氏との対談も収録。 |