顧客が理不尽な要求をする「カスタマーハラスメント」(カスハラ)を巡り、厚生労働省は従業員を保護する対策を企業に義務付ける検討に入った。具体策として対応マニュアル策定や従業員から相談を受ける社内体制の整備などが浮上している。労働施策総合推進法改正案を2025年の通常国会にも提出する。関係者が13日、明らかにした。
カスハラは近年、小売りやサービス業界を中心に社会問題化。被害から守るため、従業員の名札や、公共交通機関の運転者の氏名表示をやめる動きが広がっている。
背景として日本社会特有の「顧客第一主義」が指摘されており、法改正が改善への布石となる可能性がある。品質やサービス向上につながる正当な要求とどう区別するかが検討課題となる。
政府は6月ごろに策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に対策強化の方向性を明記する見通し。その後、労使の代表らを交えた労働政策審議会で慎重に検討を進める。
労働施策総合推進法は19年の改正で、職場でのパワハラ防止策に関し、従業員の相談に対応する仕組みを企業内で整えるよう義務付けた。厚労省は22年にはカスハラを巡り、事例ごとの対策を記したマニュアルを策定。企業に従業員の安全確保や精神面への配慮などを求めた。さらに今回、推進法改正による対策強化を模索している。
サービス業などの産業別労働組合「UAゼンセン」が今年、約3万3千人に行った調査では46・8%が「直近2年以内でカスハラ被害にあった」と回答。具体的な行為は「暴言」が39・8%で最多。次いで「威嚇・脅迫」14・7%、「同じ内容を繰り返すクレーム」13・8%などとなった。
自民党は13日、雇用問題調査会などの合同会議を開き、法整備を念頭に、カスハラ対策を検討するよう政府に求める提言案を大筋でまとめた。
(共同通信社)