2024年06月06日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2024年6月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 5月16日に、企業向け研修事業等を展開する株式会社ジェイックが、企業の人事責任者・担当者を対象に実施した「優秀と感じる新入社員の特徴」に関するアンケート調査の結果を発表しました。この調査では、新入社員の「行動」「仕事への姿勢」「ビジネスマナー」の3項目について質問がなされています。
 「行動」面では、1位が「わからないことをすぐに聞ける」(57.7%)、2位が「社員と積極的にコミュニケーションをとる」(43.3%)、3位が「失敗や学んだことについて振り返りができる」(39.4%)となっています。次に「仕事への姿勢」面では、1位が「学びや経験を振り返り、工夫・改善する姿勢」(57.7%)、2位が「責任感を持って仕事に取り組む姿勢」(50.0%)です。一方、「ビジネスマナー」面に関しては、「明るい挨拶ができる」(60.6%)が1位、「報連相ができる」(51.9%)が2位となっています。
 同社の分析によると、企業の人事は新入社員に対し、「主体的に周囲へ自ら声を掛けること」や「学びや経験を今後に活かすこと」、「素直さや前向きな姿勢」を求める傾向にあるとのことです。今春の新入社員は、大学時代の長期にわたりコロナ禍の影響でオンライン授業が主体となり、普段の生活でも対面コミュニケーションが制限されていたため、そのスキルに課題を抱えるケースも少なくありません。そのため、効果的なオンボーディングを実施する上では、新入社員を迎え入れるに当たり、上司や先輩がこうした背景を十分に考慮して対応することが求められます。
 貴社が「優秀と感じる新入社員の特徴」は何ですか?

安定志向が高まる「会社の魅力」

 さて、今回は、前回に引き続き、HR総研が「楽天みん就」(現「みん就」)と共同で実施した「2025年卒学生の就職活動動向調査」(調査期間:2024年3月6~21日)の結果を紹介します。ぜひ参考にしてください。
 まず、学生が企業を選別する際、何を最も重視しているのかを、「仕事の魅力」「会社の魅力」「雇用の魅力」の三つの観点から見ていきます。
 「仕事の魅力」で最も重視しているのは、文系・理系ともに「仕事が面白そう」で、それぞれ33%、37%と3割台となっています[図表1]。次いで「勤務地を選べる」が、文系19%、理系20%で続きます。理系は「スキルが身につく」も同様に20%で、文系でも17%と3番目に多くなっています。この設問を初めて聞いた2022年卒向け調査の結果では、1位は今回2025年卒調査と同じく「仕事が面白そう」で、文系・理系ともに3割台となっていました。ただし、次に多かったのは、文系では「スキルが身につく」(18%)、理系では「希望する職種につける」(21%)で、「勤務地を選べる」は文系15%(3位)、理系12%(「若いうちから活躍できる」と同率4位)にとどまっていました。特に理系において、「勤務地」へのこだわりが強くなっていることがうかがえます。

[図表1]学生が最も重視する「仕事の魅力」

資料出所:HR総研✕みん就「2025年卒学生の就職活動動向調査」(2024年3月、以下も同じ)

 次に、「会社の魅力」について見てみましょう。“最も重視する” と回答した割合が高かったのは「安定している」で、文系・理系ともに49%とほぼ半数に及びます[図表2]。2022年卒調査でも文系・理系ともに最多ではありましたが、その割合は文系42%、理系30%であったことを考えると、より安定志向が強くなっていることが分かります。特に、理系においてその傾向が顕著です。その他、文系・理系では「成長性が高い」(それぞれ20%、15%)や理系では「技術力・サービスが優れている」(20%)の割合も比較的高くなっています。2022年卒調査と比較して気になるのは、「経営者・ビジョンに共感」のポイントの低下です。理系はそれほど変わりませんが(11%→10%)、文系は21%→9%へと12ポイントも減少し、半分以下になっています。近年、企業は「パーパス経営」の名の下にパーパス(理念・ビジョンを含む企業としての目的意識、存在意義)を非常に重要視して採用活動でも丁寧に説明し、ミスマッチを低減する意味で、パーパスへの共感を応募者に求めるようになっています。しかし、学生にとっては、「経営者・ビジョン」よりも「安定性」が重視されているようです。

[図表2]学生が最も重視する「会社の魅力」

 「雇用の魅力」では、圧倒的な支持を集めた項目はなく、また、文系と理系で傾向が異なります[図表3]。文系で最も多かったのは「社風・居心地が良い」で33%、次いで「福利厚生がしっかりしている」が28%です。理系では「年収が高い」が最も多く29%と約3割を占め、次いで「社風・居心地が良い」(24%)、「福利厚生がしっかりしている」(22%)が続きます。2022年卒調査では、文系・理系ともに「福利厚生がしっかりしている」が最多で、それぞれ35%、40%でした。理系の「年収が高い」は17%にとどまっており、「福利厚生」から「年収」への関心の移行が見られます。一方、文系では、「福利厚生がしっかりしている」は7ポイント下がっていますが、「社風・居心地が良い」は2022年卒調査でも31%と高く、「社風」への関心は変わらないようです。

[図表3]学生が最も重視する「雇用の魅力」

最大のアピール項目は「チームで働く力」

 学生は就職活動において、自身の強みをどのように捉えているのでしょうか。就職活動でアピールしたい能力について、複数選択で回答してもらった結果が、[図表4]です。
 文系・理系ともに最も多かったのは「チームで働く力」で、文系では43%と4割台、理系では54%と半数以上となっています。「コミュニケーション能力」も多くの学生が挙げており、文系で38%、理系でも32%と3割以上に達しています。
 文系では「考え抜く力」(35%)、「適応力」(33%)も3割以上となり、「目標達成指向」(28%)がそれに続きます。一方、理系では「適応力」のほか、文系ではそれほど多くない「論理的思考力」「基礎的な学力」も「コミュニケーション能力」と同じ32%に上ります。「考え抜く力」も29%と3割近い学生が挙げています。
 文系と理系を比較すると、「異文化への理解力」は文系の17%に対し、理系は5%にとどまっています。また、「英語の語学力」「英語以外の語学力」も理系では1割未満で、ともに10%以上の文系より低くなっています。逆に、理系が文系よりも高い項目としては、「論理的思考力」「基礎的な学力」「専攻学問の専門知識」「データ解析能力」などがあります。文系の「専攻学問の専門知識」がわずか5%というのは、嘆かわしい現状です。

[図表4]就職活動でアピールしたい自分の能力(複数回答)

インターンシップの事前選考でも、まずはエントリーシート

 ここからは、インターンシップについて取り上げます。
 まず、インターンシップに参加した社数については、「0社」は文系21%、理系10%であり、文系の約8割、理系の約9割は1社以上のインターンシップに参加した経験があることが分かります[図表5]。最も多いのは文系・理系ともに「6~10社」で、文系が21%と約2割、理系が29%と3割近くに上ります。前年同時期に実施した2024年卒向け調査とは選択肢区分が異なるため単純比較はできませんが、選択肢が同じ「0社」から「3社」までの合計で比較すると、2024年卒調査では文系・理系ともに47%、今回2025年卒調査では文系36%、理系39%で、ともに2024年卒調査を下回っています。つまり、“4社以上” のインターンシップに参加した学生の割合が10%程度増えたことになります。
 2024年卒調査では最大値「10社以上」で、文系24%、理系20%でした。今回2025年卒調査の最大値は「21社以上」で、「11~15社」から「21社以上」を合計した “11社以上” で比べてみると、文系では32%となり、2024年卒調査の「10社以上」(24%)を大きく上回ります。一方、理系の “11社以上” は15%で、2024年卒調査の「10社以上」(20%)を下回っていますが、「6~10社」が29%あり、このうち「10社」が占める割合によっては、2024年卒調査を上回る可能性もあります。

[図表5]インターンシップ参加社数

 そもそも学生は、企業側のキャパシティーの関係で、応募したすべてのインターンシップに参加できるわけではありません。では、どの程度の割合で参加できているのでしょうか。「応募企業のすべてに参加できた」とする割合は、文系16%に対して理系は30%と、理系のほうが高くなっています[図表6]。「応募企業の1社にも参加できなかった」では、文系12%に対して理系はわずか3%と低く、理系のほうがインターンシップ参加の “事前選考” を通過しやすかったことが分かります。

[図表6]応募したインターンシップへの参加状況

 では、事前選考の内容にはどのようなものがあるでしょうか。インターンシップ参加前に実施された選考について尋ねたところ(複数回答)、最も多かったのは「エントリーシート」で、文系が74%と7割台、理系は89%と9割近い学生がインターンシップに参加するために「エントリーシート」を提出したと回答しています[図表7]。次いで「適性検査」が文系57%、理系62%と6割前後に及んでいます。「学力検査」も比較的多く、文系41%、理系46%と4割台となっています。
 そのほか、「グループディスカッション」と「面接」を挙げた学生も多く見受けられますが、理系では「グループディスカッション」(22%)より「面接」(32%)のほうが10ポイント高くなっています。これは、「面接」で専攻・専門内容をしっかり確認したいという企業側のニーズのほうが強いためと考えられます。

[図表7]インターンシップ参加前に受けた選考内容(複数回答)

理系は夏期休暇中に集中参加

 インターンシップに参加した時期について、開催形式(対面型/オンライン型)別に確認します。
 対面型については、文系では「2023年8月」と「2023年9月」がともに55%で最多となっており、「2023年10月」~「2023年12月」、「2024年2月」は3割台で推移しています[図表8]。理系では「2023年8月」が最多で63%、次いで「2023年9月」が59%となっており、文系よりやや高めの参加率となっています。ただし、「2023年10月」「2023年11月」は急激に参加率が低下し、それぞれ19%、13%と2割未満にまで落ち込んでいます。その後、「2023年12月」に再び参加率が上昇し41%となり、「2024年1月」「2024年2月」は1~2割前後に落ち着く動きとなっています。対面型では、文系より理系で時期により動きが大きく変動し、できるだけ大学の長期休暇期間を活用して集中的に参加しようとする意向が如実に表れているといえます。
 オンライン型については、文系では「2023年8月」と「2023年9月」の参加率が高いのは対面型と同様で、それぞれ60%、56%と6割程度に上っています。ただし、大学の授業期間である「2023年10月」~「2023年12月」でも4割以上の参加率をキープしています。一方、理系では「2023年8月」が82%と8割台で突出しています。次いで「2023年9月」が54%となり、その後「2023年10月」~「2023年12月」では3割程度まで低下しています。理系では、10~11月などの授業期間でのオンライン参加率は対面型よりやや高いものの、文系に比べると顕著に低くなっており、参加形式にかかわらず「2023年8月」と「2023年9月」に集中して参加したい学生が多いことがうかがえます。理系向けにインターンシップを企画する際には、留意しておくとよいでしょう。

[図表8]インターンシップ参加時期(開催形式別)

 次に、インターンシップに参加した学生に対する企業のアプローチ内容(複数回答)を見てみましょう。文系・理系ともに最も多いのは「早期選考会の案内」で、文系では81%と8割台となり、理系でも59%と約6割に上ります[図表9]。ただ、理系でトップとはいえ、文系より20ポイント以上低く、文系において「早期選考会の案内」に次いで多い「次のインターンシップの案内」と「特別セミナーの案内」(文系はともに39%)についても、理系はそれぞれ24%、22%と、文系より15ポイント程度低くなっています。それよりも「(プレ)エントリー受付の開始案内」(38%)や「エントリーシートの免除」(30%)のほうが高くなるなど、文系と理系では異なる傾向が見られます。一般的には文系よりも理系の争奪戦のほうが激しいといわれていますが、「何もない」と回答した割合が、文系ではわずか2%であったのに対して、理系では16%にも上るなど、意外な結果も見られます。理系では、企業の対応が専攻・専門内容によって大きく異なるのかもしれません。

[図表9]インターンシップ参加後の企業からのアプローチ内容(複数回答)

文系以上に活動量が増加した理系

 ここからは、「プレエントリー」「セミナー・会社説明会」などの就職ステップの状況について、2024年卒調査の結果と比較しながら(2024年卒調査→2025年卒調査)見ていきます。
 まずは、「プレエントリー社数」の状況について、文系・理系ともに「0社」の割合がそれぞれ5%→10%、8%→10%へと増えており、逆に「1~20社」はそれぞれ51%→46%、69%→59%へと減少しています[図表10]。インターンシップ参加企業では、プレエントリーやエントリーシートを免除している企業も少なくありませんから、「0社」が微増していることは理解できます。「21~40社」については、文系・理系ともに2024年卒調査とほぼ同割合となっている一方、理系では「41~60社」が7ポイント増加しており、「101社以上」の状況を見ても、プレエントリー数は増えているといってよさそうです。文系においても「101社以上」が3ポイント増となるなど、増加傾向にあるといえます。
 4月25日に発表されたリクルートワークス研究所の「第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)」によると、2025年卒の大学卒求人倍率は1.75倍と、2024年卒の1.71倍より0.04ポイント上昇するなど、景気の回復に連動して、企業の採用意欲は依然高く推移しているものの、学生はそれに踊らされることなく、就職活動に取り組んでいるようです。かつてのバブル期のように、誰もが景気の良さを実感できた極端な景気拡大期と違い、現在は賃上げが物価上昇に追いついておらず、学生を含めた国民全体にあまり景況感改善の実感が伴わない景気回復期となっていることも要因と考えられます。

[図表10]3月時点でのプレエントリー社数(2024・2025年卒比較)

 次は、3月までに参加したセミナー・会社説明会(以下、セミナー等)の社数について見ておきます。
 文系では、「0社」が13%→17%に増えており、「6~10社」(2025年卒17%)と並んで最多の割合となっています[図表11]。「0社」が増えているのは、インターンシップ自体がセミナー等の役割も果たし、インターンシップへの参加からそのまま早期選考に流れていく層が増えていることが影響していると推測されます。[図表10]のプレエントリー社数において、「0社」が増えていたのと同様です。「6~10社」は、2024年卒調査で最多だった22%から5ポイント減少しており、依然として最多割合ではあるものの2割にも満たない結果となっています。「6~10社」のほかにも、「3社」(10%→4%)や「4~5社」(18%→11%)も前年より減少しており、それに代わって「11~15社」「16~20社」「21社以上」といった社数の多い区分が軒並み増加していることから、全体としては文系のセミナー等参加社数は増加傾向にあるといえるでしょう。
 一方、理系では、文系と違って「0社」は13%→12%とわずかながら減少しています。そのほか、「2社」(12%→7%)、「3社」(11%→10%)、「4~5社」(16%→7%)、「6~10社」(26%→22%)といった比較的社数の少ない区分においても軒並み減少しています。2024年卒調査で最も多かった「6~10社」は、ポイントは減少したものの2割以上を維持し、今回2025年卒調査でも最多となっています。社数の多い区分である「11~15社」は8%→17%、「16~20社」も4%→12%へと大幅に増加しており、「21社以上」も2ポイントの増加を見せるなど、理系では文系以上にセミナー等参加社数が伸びているようです。プレエントリーのところでも述べましたが、理系におけるこれらの活動量の増加は極めて意外な結果といえます。

[図表11]3月までに参加したセミナー・会社説明会の社数(2024・2025年卒比較)

 次に、初めてセミナー等(インターンシップ募集の説明会は除きます)に参加した時期について確認します。
 「大学3年6月以前」とする回答が、文系で16%→25%へと大きく増加するとともに、理系でも21%→22%へと微増しています[図表12]。また、理系においては、「大学3年8月」が12%→22%へとほぼ倍増したほか、「大学3年9月」も2%→8%へと大きく増えています。「大学3年9月」までにセミナー等への参加を開始した理系学生の割合は、既に69%とほぼ7割となっており、2024年卒調査の49%から顕著な増加となっています。「大学3年9月」までの割合が52%でようやく半数に届いた文系とは、大きな差が開く結果となりました。[図表8]のインターンシップ参加時期でも見られたように、理系ではセミナー等への参加においても長期休暇の夏期休暇中に就職活動を集中して進めようとしている意思がうかがえます。
 一方の文系では、「大学3年9月」から開始した割合は9%→3%へと減少しており、「大学3年9月」までに開始した割合は、2024年卒調査の51%から微増にとどまっています。文系では「大学3年12月」が8%→13%と増加しており、「大学3年6月以前」に次いで高い割合となっています。

[図表12]初めてセミナー・会社説明会に参加した時期(2024・2025年卒比較)

大学3年12月までに6割の学生が「面接」を経験

 次は「面接」について見ていきます。まず、3月までに「面接を受けた社数」を2024年卒調査の結果と比較してみましょう。
 文系では、2024年卒調査と同様に「0社」が最多ですが、その割合は32%→28%へ減少しています[図表13]。つまり、「1社」以上の面接を受けたことのある割合が68%→72%に増えたということです。「1社」は15%→10%と減少し、その分「2社」「3社」「4~5社」などが増加しています。特に「6~10社」は11%→17%へと6ポイント増加し、面接を受けた社数区分(1社以上)の中で最も高い割合となっています。「16~20社」は微増ですが、「11~15社」と「21社以上」はそれぞれ2ポイント減少し、2~10社程度の面接を受けた学生の割合が増えている一方で、面接社数が多い学生の割合は減少しています。
 理系では、「0社」が29%→32%に増加し、「1社」~「3社」は2024年卒調査とほぼ変わりません。「4~5社」は減少しましたが、「6~10社」が12%→15%、「11~15社」が2%→5%に増加するなど、文系とはやや異なる様相を呈しています。

[図表13]大学3年3月までに「面接を受けた社数」(2024・2025年卒比較)

 初めて面接を受けた時期については、文系・理系ともに「大学3年1月」が最多でそれぞれ21%、18%となっています[図表14]。ただし、文系では2024年卒調査と比較しても「大学3年10月」から大きく増加し始め、「大学3年12月」までに初めて面接を受けた文系学生は59%と6割近くに上っていることを考えると、「大学3年1月」は後半組といえます。
 理系では「大学3年6月以前」から文系より高い割合となっており、「大学3年8月」では11%に達し、「大学3年9月」までに初めて面接を受けた理系学生は32%と3割以上となっています。これは、同時期の文系(14%)の2倍以上であり、インターンシップやセミナー等だけでなく、面接においても理系は夏期休暇中に活発に動いていたことがうかがえます。しかし、「大学3年12月」までの割合で見ると、理系は57%で、「大学3年10月」と「大学3年11月」に大きく動いた文系に逆転されています。

[図表14]初めて面接を受けた時期(2024・2025年卒比較)

大学3年3月までの内定出し、内定承諾保留が6割以上

 最後に「内定(内々定)」の状況について見ておきましょう。まず、大学3年3月時点での内定(内々定)社数ですが、「0社」、つまり「未内定」と回答した割合を2024年卒調査と比較すると、文系で67%→49%、理系で53%→49%と減少しています[図表15]。つまり、“1社以上” の内定を持っている割合(内定率)が、文系で33%→51%、理系で47%→51%へと大きく増えたことになります。これは、大学3年3月時点で半数以上の学生が既に内定を持っているということです。就職活動や企業の採用活動がいかに早期化しているかが分かります。
 内定社数で最も多いのは、文系・理系ともに「1社」で、それぞれ27%、29%と3割近くを占めます。次いで「2社」が文系で14%、理系で「10%」となっています。理系では「3社」も「2社」と同じく10%を占めます。“2社以上” の内定を持つ学生が既に2割以上いることからも、学生優位の売り手市場であることがうかがえます。

[図表15]大学3年3月時点での「内定(内々定)社数」(2024・2025年卒比較)

 2024年卒調査よりも早いペースで内定者が増えていますが、学生の「内定承諾」状況について2024年卒調査と比較すると、企業側にとってあまりよくない結果が見られました。大学3年3月時点で「内定承諾した、もしくは、内定承諾する企業を決めた」と回答した割合は、文系で33%→29%、理系に至っては57%→38%へと20ポイント近く減少しているのです[図表16]。コロナ禍以降、早期に取得した内定をそのまま承諾する学生の割合が増えていましたが、この流れは変わってきたようです。
 「まだ決めかねているが、就職活動は終了した」とする学生は、文系で10%いますが、理系ではゼロです。文系・理系ともに残りの6割以上の学生は「まだ決めかねており、就職活動を続ける」と回答していることから、目当ての企業の合否を待っている学生が多いことが分かります。企業がどれだけ早く内定を出しても、学生の最終決断は本命の企業の結果次第で先延ばしされ、結果として内定辞退も起こり得ます。ここのところ、企業は内定出しを早める競争をしてきましたが、選考および内定出しの時期について、そろそろ見直すタイミングが来ているのかもしれません。

[図表16]大学3年3月時点での「内定承諾の状況」(2024・2025年卒比較)

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約2025年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/