A5判/208ページ/2500円+税/中央経済社
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 本書は、著者らが参画するプロジェクトの研究成果を土台とした基本書シリーズの一冊だ。「ダイバーシティ経営」とは “多様な人材を受け入れ、それぞれが保有する能力を発揮し、それを経営成果として結実させるという戦略をもって組織運営を行うこと” であるとし、「仕事と子育ての両立」の課題として「女性(母親)の活躍」と「男性(父親)の子育て」の両方に着目している。
■ 1991年の育児休業法成立以降、女性の仕事と子育ての両立という視点で日本企業におけるワーク・ライフ・バランス(WLB)支援が拡充した。その一方、“子育てが主・仕事が従” となる両立支援は、女性が活躍する場の拡大を阻害していた側面もあると指摘する。本書の前半(序章~第3章)では日本企業のWLB支援を分析し、仕事と子育ての両立支援策を進める上で関係の深い国の政策を解説。さらに、子育て期の女性社員に対する制度の在り方、および時間に制約のある社員の活躍を促す視点から求められる管理職のマネジメントについて提言する。
■ 後半では視点を男性に移し、男性の子育ての現状と関連する政策や企業の取り組みについて、統計調査等を踏まえながら検討する(第4章)。さらに2010年の改正育児・介護休業法により導入が義務化された短時間勤務制度を取り上げ、制度利用者と周囲の軋轢が生じている現状と、多くの社員にとってのWLBが実現し、組織のダイバーシティ推進が実現するための働き方について論を展開していく(第5章)。第6章では家庭・地域の子育て支援を取り上げており、当事者以外には見えづらい子育て世帯のニーズが理解できる。仕事と育児の両立の背景にある課題と取り巻く環境の変化を把握し、自社における支援施策を検討するために、本書を参考にしていただきたい。
内容紹介 ダイバーシティ経営の課題として、女性(母親)の活躍と男性(父親)の子育てに着目し、仕事と子育てを両立できる多様な働き方とキャリア形成における支援のあり方を考える。 目次 |