東京商工リサーチが約5千社を対象に行った調査で、退職代行業者を活用した従業員の退職を経験した企業が9・3%に上ることが分かった。勤務先に退職の意思を告げる煩わしさを数万円で省けるとされ、一定のニーズがあることを裏付けた。企業側は賃上げや休日増加といった手を打つが、同社は「退職を止める決定打にはなっていない」と指摘した。
調査は6月上旬に実施。有効回答5149社のうち、2023年1月以降に「退職代行業者を活用した従業員の退職があった」企業は479社だった。中小企業が8・3%だったのに対し、大企業は18・4%に上った。業種別では消費者と対面する接客業や販売業で多かった。
離職防止や新規採用に向けた取り組みでは「賃上げをした」との回答が7割を超えた。休暇日数を増やしたり、テレワークを導入したりする企業も目立った。
企業側が人材確保に注力する一方、交流サイト(SNS)の普及で職場環境を容易に比較でき、代行業者の浸透もあって退職の心理的ハードルは一段と下がっている。
こうした状況に東京商工リサーチは「『辞める勇気』と転職時の不利は過去の話」と分析。「社員や学生の意識の変化を織り込んだ人事戦略の練り直しが求められている」と指摘した。
(共同通信社)