中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は25日、賃金の下限に当たる最低賃金の改定目安額の議論を始めた。現在の最低賃金の全国平均時給は1004円で、岸田政権は物価高騰や春闘による賃上げを踏まえ、大幅な引き上げに意欲を見せている。過去最大の43円増となった2023年度を上回る上げ幅を軸に、1050円をにらんだ労使の調整が進む見通し。7月下旬に中央審議会としての目安額をまとめる。
23年度は政府が目標としていた千円の大台に初めて到達した。岸田文雄首相は「30年代半ばまでに1500円」とする新目標を表明。今月21日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」は達成の前倒しを目指すと強調した。
25日の審議会には武見敬三厚労相が出席し「物価を上回る賃金の上昇を実現していかなければならない。国民は期待感を持って引き上げの水準に注目している。最低賃金の重要性を踏まえた議論をお願いする」と言及した。
円安や原油高を背景に、物価の高騰は歯止めがかかっておらず、賃金上昇を上回る状況が続く。春闘では大企業と中小企業の賃上げ率に差もあり、政府関係者は「賃金格差を是正するためにも最低賃金の大幅な引き上げが必要」と指摘する。
一方、急激な賃上げは人件費上昇につながるため、日本商工会議所など中小企業4団体は、企業経営や地域経済に配慮し、データに基づいた審議をするよう政府に要望している。
最低賃金は毎年度改定される。中央審議会は労使の代表者らが数回協議し、都道府県ごとの目安額を示す。それを参考に都道府県の地方審議会が話し合い8月ごろ実際の改定額を決定。10月以降、順次適用され非正規を含む全ての働く人が対象となる。
現在の最低賃金は最も高い東京都(1113円)と最も低い岩手県(893円)で220円の差があり、地域間格差の是正も主要論点となる。
(共同通信社)