2024年07月12日掲載

BOOK REVIEW - 『組織の未来は「従業員体験」で変わる 人手不足の時代にエンゲージメントを高める方法』

上林周平、松林博文 著
株式会社NEWONE 代表取締役社長、グロービス経営大学院 講師 
四六判/224ページ/1800円+税/英治出版 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 「体験価値」が重視される現在、消費者の体験価値に重きを置く企業は非常に多い。一方で、自社の従業員についてはどうだろうか。働くことに対する価値観が変化していることを鑑みても、企業は従業員が働くことで得られる体験の提供を重視すべきかもしれない。本書では、「従業員体験(エンプロイーエクスペリエンス。以下、EX)」を「企業や組織に所属する従業員が、仕事や職場において得る経験や感情のこと」と定義し、EXの重要性と向上施策について解説する。

■ 第1章では「人手不足倒産」や「ゆるブラック」など、昨今の経営・人事労務課題を例に挙げ、人材マネジメントを困難にしている原因をひもとく。続く第2~4章は、第1章の内容を踏まえて「期待値」「個別化」「時間軸」の三つの視点で、優れたEXを設計するための考え方や具体的な手法を紹介。 “万人にとっての絶対的な体験価値は存在しない” という前提の下、互いの「違いやズレ」を見いだす対話の重要性や従業員の行動・思考・感情を可視化するジャーニーマップ作成のコツに触れる。第5章では、著者らが関わってきた事例を基にEXデザインのポイントを挙げる。第6章では、優れたEXが組織とそこで働く人に与える影響を述べており、経営者や人事担当者がビジョンを描く上でのヒントを得られるだろう。

■ 多くの人事担当者が人材確保のため奔走しているが、企業規模や職種によってはできることが限られてしまう場面もあるのではないか。この点、EX向上は企業規模を問わず取り組むことができるし、著者は “中小企業こそ真剣に取り組むべき” と訴える。本書を参考に自社に合わせたEXを創意工夫して生み出すことは、人材流出やエンゲージメント低下などの課題解決に寄与するだけでなく、よりよい会社・組織づくりにもつながるだろう。

組織の未来は「従業員体験」で変わる 人手不足の時代にエンゲージメントを高める方法

内容紹介
辞めない会社は何が違うのか──社員の「体験」に目を向けよう

危機的な人手不足の時代、人が辞めない会社・採れる会社は何が違うのか?
その鍵として世界的に注目される「従業員体験(Employee Experience)」の高め方を、HR企業の経営者とビジネススクール講師がわかりやすく解説する。

企業規模や業種を問わず使えるツールと、職場内での対話のヒントが満載。

第1章 従業員体験が組織を変える
第2章 期待値を合わせる──この会社ではどんな体験ができるのか
第3章 個別化して考える──内的ダイバーシティをどう活かすか
第4章 時間軸を意識する──組織で働くという「旅」をどう演出するか
第5章 EXデザインの実践事例と応用のヒント
第6章 「参加できる組織」の時代