2024年07月26日掲載

BOOK REVIEW - 『社員がメンタル不調になる前に 会社の責任? それとも……』

藤田康男 著
株式会社Smart相談室 代表取締役・CEO 
四六判/208ページ/1700円+税/日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 法人向けオンライン対人支援サービス「Smart相談室」の設立者である著者は、メンタルヘルス不調(以下、メンタル不調)になる前に相談できる仕組みづくりの重要性を強調する。第1章では「メンタル不調に自分では気付けない」こと、不調は「風邪のようには治らない」ため長期的に付き合い続けること、不調の原因の多くは会社の人間に相談できない悩みであること──など、聞き取り調査や著者自身の体験等、多くの事例から見えてきた課題を解説する。さらに第2章では、相談対応を行う人事労務担当者(以下、担当者)の視点に立ち、担当者とメンタル不調者の想いの間の「深いギャップ」に迫る。担当者は相談者に寄り添いたい気持ちがある一方、会社の代弁者とならざるを得ず、板挟みの状況にあるという。誰にでもメンタル不調に陥る可能性があるため、そもそも「相談」はなぜ難しいのか、安心して相談する場をどうつくるかという内容は、担当者以外も考えさせられるところだ。

■ 第3~5章では、「モヤモヤ」段階で相談することの大切さやメンタル不調との向き合い方、著者が「Smart相談室」の開設を通じて理解したカウンセリングの要諦等について解説し、これらを踏まえて第6章では、メンタル不調の事例を取り上げる。「Smart相談室」に寄せられた赤裸々な悩みと、当事者が「相談」を通して変わった心境を語る声を紹介しつつ、相談することの重要性や有効性、相談を受けるとはどういうことかを説く。担当者がカウンセラーとして相談を受ける際に把握すべき注意点も理解できる内容だ。

■ 最終章の第7章は、担当者に求められる役割に焦点を当てる。著者は社員が相談できる環境づくりとともに、担当者の心身の健康の大切さも訴える。社員のメンタル不調への対応策を検討する経営者にも示唆を与える一冊だ。

社員がメンタル不調になる前に 会社の責任? それとも……

内容紹介
前触れもなく突然社員が辞めてしまうを防ぐ「相談」の仕組みづくり

日本は精神疾患患者が急増している。
政府もストレスチェックの実施や産業医の専任、健康経営の啓蒙、ハラスメント窓口の設置義務化など、多数の施策を打ち出しているが、リモートワークが増えたことで、残念ながら一層加速しているというのが現状だ。

そんな中で、様々な専門性を持ったプロフェッショナルのカウンセラーがオンラインカウンセリングを行う法人向けオンライン対人支援サービス「Smart相談室」には数々のリアルな相談が寄せられた。

本書では、そんな膨大な数にのぼる相談内容から、社員がメンタル不調になる前に、人事労務担当者が何をなすべきかを集約し、企業の人事労務担当者がどのように対処すべきかを示しただけでなく、メンタル不調への悩みを抱える当事者にとっても有益な心の支えとなる1冊となっています。