中小企業の倒産が増えている。深刻な人手不足に加えて原材料などの価格高騰で、事業がうまく回らなくなるのが主な理由だ。歴史的な円安や値上げが奏功して大企業の業績は好調だが、その恩恵は下請けなどに行き届いていない。
東京商工リサーチが発表した2024年1~6月(上半期)の全国の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は前年同期と比べ2割増の4931件と、14年以来の高水準だった。このうち従業員10人未満の企業が8割を占めた。
賃金を上げられないために離職者が相次いだり、コストが増えているのに値上げできなかったりする実態がある。倒産理由ではほかに、新型コロナウイルス禍で導入された実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済本格化が追い打ちとなったケースも目立った。
地域ごとの景況感の格差も鮮明だ。内閣府のリポートによると、24年春闘の都道府県別の平均賃上げ率が判明した33道府県のうち、23道府県で全国平均の5・08%を下回った。自動車などの大手メーカーの拠点がなかったり、観光産業が弱くてインバウンド(訪日客)が少なかったりする地域は、賃上げが低調な傾向にあるという。
空前の好景気に沸くのが熊本県だ。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の工場ができた。これが呼び水となり、半導体関連企業が続々と周辺に進出。人材獲得合戦が起き、飲食店や商業施設も次々と開業している。県内への経済効果は6兆円以上との試算もある。
半導体工場は北海道や宮城県でも建設計画が進んでおり、地域活性化の切り札とみられている。
(共同通信社)