定年後の賃金改善傾向 人手不足で引き留め 24年度経済財政白書

 新藤義孝経済再生担当相は2日の閣議に2024年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出し、定年後に再雇用で働く高齢者の賃金に改善傾向がみられるとの企業調査の分析結果を示した。定年前に比べ再雇用時の賃金が8割程度以上とした企業が39%に上り、19年調査より増加。人手不足が深刻化しており、高齢者の待遇を良くすることで引き留めを図っているようだ。
 内閣府が3月に約2千社から回答を得た調査によると、再雇用時の賃金は定年前比で「ほぼ同程度」が15%、「8~9割程度」が24%、「6~7割程度」が45%、「4~5割程度」が6%だった。「8~9割程度」「ほぼ同程度」の合計割合は19年調査より15ポイント増えた。
 政府は経済や財政を長期で安定させるための前提として、70代前半の労働参加率が45年度時点で5割を超える姿を想定している。白書では人口減の深刻化で「高齢層においても人材獲得競争が激しさを増すことが考えられる」と予想した。
 一方で賃金が基準額を超えると厚生年金の受給額が減る制度や、社会保険料負担を避けるために働く時間を抑える「年収の壁」が就労増の妨げになっている可能性を指摘。「各種制度について就労意欲をより後押しする方向へと見直していくことが急務」と明記した。
 日本経済について、構造的な賃上げを伴うデフレ脱却については道半ばとしつつ、好調だった24年春闘に触れ「これまでにない前向きな動きが出てきている」とした。
(共同通信社)