厚生労働省は、従業員5人以上の個人事業所で働く人の厚生年金加入を広げる方向で調整を進めている。製造業や建設業など17業種に限っている加入義務の対象を飲食業や宿泊業、理美容業などを含めて全てに拡大する。法人化した事業所は全業種で義務化されており、個人事業所も同様にして従業員が将来受け取る年金額を手厚くする。約20万人が新たに加入する見通しだ。
厚労省は与党との協議を進め、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針。ただ、厚生年金の保険料は労使で折半している。新たに加入する事業所は費用や事務の負担が増えるため、反発が予想される。支援策や施行時期も焦点となる。
厚生年金の加入義務は5人以上の個人事業所の場合、他に金融・保険業、教育事業などに限定。他業種は雇用実態の把握が難しいことなどから義務の対象外としてきた。このためフルタイムで勤めても国民年金のみとなり、改善を求める声が上がっていた。
厚労省の有識者懇談会が7月にまとめた報告書は、働き方や勤め先の選択に不公平が生じない中立的な制度の構築が重要と指摘。業種による差は「合理的な理由は見いだせない」として解消の検討を求めていた。
厚労省は、法人事業所に勤めるパートら短時間労働者の厚生年金加入も拡大する。現在、短時間労働者が加入するには(1)勤務先の従業員数が101人以上(10月からは51人以上)(2)週の労働時間が20時間以上(3)月給8万8千円以上-といった要件を全て満たす必要がある。このうち従業員数の要件を撤廃する方針で、対象は約70万人の見込み。個人事業所分と合わせると約90万人が新たに加入することになる。
(共同通信社)