PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
A5判/200ページ/2500円+税/日本能率協会マネジメントセンター
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 帝国データバンクの調査によると、従業員の退職や採用難を原因とする「人手不足倒産」は、2024年上半期において182件と、過去最多のペースで推移している。少子高齢化が進む日本において、まさに従業員が会社を選ぶ時代が到来しているといえるだろう。そうした「選ばれる会社」になるために必要なこと、それが本書の掲げる「従業員エクスペリエンス」(以下、EX)の考え方である。金銭的報酬だけでは従業員の意欲を引き出せない現代においては、働きやすさや働きがい、企業理念への共感に加え、従業員自身が成長実感を得られる職場が求められる。本書は、このような新たな経営課題に対し、企業がどのようにEXをデザインし質を高めていくかについて、詳細かつ体系的にまとめている。
■ 第1章ではEXが組織と従業員にもたらす価値に言及し、第2章ではEX向上を成功させる六つの領域を提示、EXを高めるためのポイントとして透明性、即時性、個別性、合理性の4要素を挙げる。第3章ではEXをデザインするのに必要な従業員のペルソナ設定やエンプロイージャーニー(従業員が社内で直面する一連の体験)の設計手法を紹介した上で、第4章ではEXと密接に関わるテクノロジーツールの効果的な活用方法に触れる。第5章では、EX向上のために会社や上司が留意すべき点を、部下との具体的な対話例を交えつつ、さまざまな場面に即して分かりやすくまとめている。
■ 最後の第6章では、メルカリ、パーソルグループ、ユニリーバ・ジャパン、富士通の先進4社の実践事例が紹介されており、EXの取り組みを推進する上で大いに参考となるだろう。人材不足に悩む経営者、従業員のエンゲージメントやパフォーマンスを向上させたいと考える人事担当者は、本書を手掛かりとしてEXに目を向けてみてはいかがだろうか。
内容紹介 従業員エクスペリエンス (EX;Employee Experience)とは「社員が仕事を通して得られるすべての体験」のことをいい、この体験を通して働く人の意欲や満足度そして幸福度を高めることがその趣旨になります。 つまりEXとは、社員の様々な仕事体験を捉え、それら1つ1つをポジティブに認識できるようにしていくことで、会社や仕事に対する求心力を高めていくことです。 こんな方におすすめ
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