2024年09月20日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2024年9月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 今年4月、新卒社員が退職代行サービスを利用している件が話題となりましたが、同サービス『退職代行モームリ』を運営する株式会社アルバトロスは8月7日、その利用者を対象としたアンケート調査の結果を発表しました。同調査は、新卒社員に限定せず幅広い年代の利用者を対象としたものですが、ここでは新卒社員に限定した利用状況(2024年4月1日~7月31日)に関する集計結果を紹介します。
 月次の利用者数では、4月256人、5月298人、6月251人、7月211人と毎月200人台となっていましたが、ゴールデンウイーク明けがピークだったようです。男女比を見ると、利用者全体では女性よりも男性のほうがやや多いものの、新卒社員に限ると女性が55.5%で男性を上回っています。この期間内の退職理由について、最多は「入社前の契約内容・労働条件と勤務実態の乖離(かいり)」(44.7%)で、次いで「いじめやパワハラなどの人間関係」(27.9%)、「精神的・肉体的な不調」(19.5%)と続き、「キャリア・給与面」(3.6%)は少数となっています。退職時期別に見た退職理由について、同社では次のように考察しています。

4~5月は入社前のイメージと勤務実態や職場環境のギャップ等が多く挙げられている。企業側の入社前の説明不足や労働者側の会社情報の調査不足等が原因ではないかと思われる

本社と現場での労働環境に対する考え方の相違が発生している企業も多い印象

6~7月は各種ハラスメントや人間関係にまつわるものが多くなっている。業務に慣れてくるこの時期は、業務面ではなく人間関係などのメンタル面のフォローを中心に行う必要があるといえる

 せっかく苦労して採用した新卒社員が早期離職しないように、入社後の業務面やメンタル面のフォローだけでなく、来年4月に新卒社員を迎え入れる前から、応募者や内定者に対して企業が配慮、支援しておくべきことはいろいろとありそうですね。

「就活前半」から口コミサイトが躍進

 さて、今回は、HR総研が就活口コミサイト「就活会議」と共同で、2025年卒業予定の同サイト会員学生を対象に実施した「2025年新卒学生の就職活動動向調査(6月)」(調査期間:2024年6月3~17日、有効回答:338件。以下、25年卒調査)の結果を紹介します。ぜひ参考にしてください。
 まずは、就職サイトの活用状況について見ていきます。2023年6月~2024年2月の「就活前半」と、就活ルール上で採用広報解禁となった2024年3月以降の「就活後半」で、それぞれ活用した就職サイトを複数選択で回答してもらい、さらにその中から1年間を通じて最も活用した就職サイトを一つだけを回答してもらいました。前年同時期に実施した調査(以下、24年卒調査。記事はこちら)は「楽天みん就」(現「みん就」)会員学生を対象とした共同調査であったため、両サイトそれぞれで想定されるバイアスの差を考慮し、前年の調査結果との一覧での比較は控えました。ご了承ください。

 就活前半(2024年2月以前)の就職サイトの活用状況では、上位4サイトの顔ぶれは文系・理系で全く変わらず、1位が「マイナビ」、2位が「就活会議」、3位が「ONE CAREER」、4位が「リクナビ」となっており、文系の「マイナビ」(86%)を筆頭に、すべて5~8割台の活用度となっています[図表1]。今回の25年卒調査は、「就活会議」会員学生を対象に実施していますので、「就活会議」の順位をフラットに見ることはできないとはいえ、同じく就活口コミサイトである「ONE CAREER」も、代表的な就職ナビである「リクナビ」を上回っていることに驚きます。これまで就活口コミサイトの活用は、面接選考等が本格化する就活後半(3月以降)に高まる傾向があり、就活前半はインターンシップ情報の収集とエントリーを目的に就職サイトを活用することが多く、就職ナビの活用度のほうが就活口コミサイトを上回ることが常でした。現に24年卒調査では、文系・理系ともに「リクナビ」が「ONE CAREER」と「就活会議」を上回り、2位となっていました。今回の結果は、25年卒学生の就職活動において、就活前半から既に面接選考を受ける学生が多かったことをうかがわせるものと言えるでしょう。これらの就活口コミサイトは、実際に過去の選考に通過したエントリーシートの回答例を公開していることも、学生を吸引している大きな理由の一つだと思われます。
 5位以下を見ると、就活口コミサイトの「OpenWork」のほか、「OfferBox」や「dodaキャンパス」(文系)、「キミスカ」(同)などの逆求人サイトもランクインしています。理系では、理系学生特化型の逆求人サイトである「LabBase」や「TECH OFFER」もランクインするなど、従来の就職ナビだけでなく、さまざまなタイプの就職サイトが活用されていることが分かります。

[図表1]「就活前半(2月以前)」に活用した就職サイトTOP10(複数回答)

順位 文系 理系
1 マイナビ 86% マイナビ 75%
2 就活会議 70% 就活会議 75%
3 ONE CAREER 69% ONE CAREER 69%
4 リクナビ 67% リクナビ 57%
5 OfferBox 46% OpenWork 43%
6 OpenWork 39% LabBase 35%
7 キャリタス就活 38% キャリタス就活 27%
8 楽天みん就 20% OfferBox 22%
9 dodaキャンパス 20% TECH OFFER 22%
10 あさがくナビ 18% unistyle 19%
10 キミスカ 18%  

資料出所:HR総研×就活会議「2025年新卒学生の就職活動動向調査(6月)」(2024年6月)([図表2~17]も同じ)

大学グループによって異なる活用サイト

 次に、就活後半(2024年3月以降)の就職サイトの活用状況では、文系では上位(1~4位)のサイトの顔ぶれ・順位は就活前半と変わらないものの、理系では1位が「就活会議」(64%)、2位が「ONE CAREER」(59%)となっており、就活前半で1位だった「マイナビ」(56%)をも上回る結果となっています[図表2]。「リクナビ」(31%)は「OpenWork」(38%)にも抜かれて5位に転落しています。理系のほうが、就活後半での就職ナビの活用度は低下しているようです。

[図表2]「就活後半(3月以降)」に活用した就職サイトTOP10(複数回答)

順位 文系 理系
1 マイナビ 73% 就活会議 64%
2 就活会議 68% ONE CAREER 59%
3 ONE CAREER 60% マイナビ 56%
4 リクナビ 44% OpenWork 38%
5 OpenWork 39% リクナビ 31%
6 OfferBox 34% LabBase 15%
7 キャリタス就活 19% OfferBox 11%
8 unistyle 15% unistyle 10%
9 楽天みん就 14% TECH OFFER 9%
10 あさがくナビ 10% キャリタス就活 8%
10 キミスカ 10%  

 ここで、就活前半と就活後半の就職サイトの活用度の差を見てみましょう。[図表3]は、[図表1][図表2]から文系のデータだけを抜き出して並べたもの、つまり文系学生が就活前半と就活後半に活用した就職サイトの活用度を比較したものです。
 すべての就職サイトで活用度は低下していますが、就活前半から後半への変化の度合いを比べると、就職ナビは「マイナビ」が86%→73%(-13ポイント)、「リクナビ」が67%→44%(-23ポイント)と10~20ポイント以上も低下しているのに対して、就活口コミサイトの「就活会議」が70%→68%(-2ポイント)、「ONE CAREER」が69%→60%(-9ポイント)と、落差は1桁台にとどまります。就職活動期間の全体を通して活用されるサイトは、今や就活口コミサイトが就職ナビに取って代わる時代が来たと言えそうです。

[図表3]文系の「就活前半(2月以前)」と「就活後半(3月以降)」に活用した就職サイト比較(複数回答)

順位 就活前半(2月以前) 就活後半(3月以降)
1 マイナビ 86% マイナビ 73%
2 就活会議 70% 就活会議 68%
3 ONE CAREER 69% ONE CAREER 60%
4 リクナビ 67% リクナビ 44%
5 OfferBox 46% OpenWork 39%
6 OpenWork 39% OfferBox 34%
7 キャリタス就活 38% キャリタス就活 19%
8 楽天みん就 20% unistyle 15%
9 dodaキャンパス 20% 楽天みん就 14%
10 あさがくナビ 18% あさがくナビ 10%
10 キミスカ 18% キミスカ 10%

 活用した就職サイトの最後の項目として、1年間を通じて最も活用した就職サイトを一つだけ回答してもらった結果を紹介します。大学グループ別に最も活用した就職サイトを比較したところ、興味深い結果が見られました[図表4]
 全体では、1位「マイナビ」(42%)、2位「ONE CAREER」(24%)、3位「就活会議」(14%)と続きますが、旧帝大クラスと早慶大クラスでは、「ONE CAREER」が1位で、「マイナビ」が2位となっているのです。旧帝大クラスでは、「マイナビ」(25%)に対して、「ONE CAREER」は2倍以上の52%と、半数を超えています。上位国公立大や上位私立大など、上記2グループ以外はすべて「マイナビ」が1位ですが、マイナビのシェアを見ると、上位国公立大が38%、その他国公立大が40%、上位私立大が47%、中堅私立大が55%、その他私立大が60%と下位のグループほどシェアが高く、逆に「ONE CAREER」のシェアは徐々に低くなる傾向にあります。その他私立大における「ONE CAREER」のシェアはわずか7%しかありません。大企業志向の学生が多い大学グループほど、「ONE CAREER」を支持する学生が多くなっているようです。大企業ほど応募者は多く、1社当たりの口コミ投稿も多くなりがちなのに対して、中堅・中小企業に関する1社当たりの口コミ投稿数は少なく、口コミサイトとしての利用価値があまり見いだせないのかもしれません。

[図表4]就職活動を通して最も活用した就職サイト(大学グループ別)

図表4

就活口コミサイトの利用目的は、ESと面接対策に集中

 最も活用した就職サイトについて、その理由もフリーコメントで回答してもらっています。活用度が上位の就職サイトから抜粋して紹介します。

【マイナビ】

求人情報が一番多く載っているから(理系、東京工業大学)

最も有名で、掲載されている企業も多かったから(文系、熊本大学)

初めにダウンロードしたから(文系、南山大学)

業界の検索や情報などを浅く広く調べるのに多く利用した(文系、武蔵野美術大学)

インターシップや新卒採用の情報が一番そろっていて、検索すればその会社の概要が分かるから(文系、関西学院大学)

志望企業の本選考のエントリーに必要だったため(理系、富山県立大学)

企業探しができるだけでなく、自己診断ツールなどが使いやすかったから(文系、青山学院大学)

大学指定のお薦めサイトであったため(文系、名古屋外国語大学)

広告などから得ている信頼度から(文系、青山学院大学)

会社説明会の予約・キャンセルがワンクリックでできたため、使いやすかったから(文系、中央大学)

周りで利用している人が多かったから(理系、大阪公立大学)

【ONE CAREER】

ES(エントリーシート)、選考ステップなどをまとめて確認できるから(理系、名古屋大学)

面接で聞かれた質問事項が多く書かれており、面接対策に大いに役立ったから。また、選考体験記には通過ESがすべて書かれており、最終面接までいった選考のみ掲載されているため、非常に有用な情報を得ることができたから(理系、群馬大学)

志望動機を参考にしたり、面接の進み方などを確認したりすることができたため(文系、神戸大学)

内定者ESや面接体験談などの選考の参考になる情報から基本的な会社概要まで、幅広く調べることができて便利だったから。デザイン的にも使い勝手が良かった(文系、大阪大学)

エントリーシートや選考フロー、また “合格の秘訣(ひけつ)” というコラムのようなもの、面接で聞かれた質問のほとんどの内容が入っていたから(理系、東京都市大学)

登録会社数と面接レポートが一番充実しているため、必ずチェックしている(文系、明治大学)

他の就職サイトにない生の情報が多く得られたため(文系、横浜国立大学)

エントリーシートや面接の準備に最も役立ったと感じるため(理系、北海道大学)

【就活会議】

面接の体験記があったので、事前にどのような質問をされるのかがイメージできたから(理系、北九州市立大学)

各社で実際に働いている社員の口コミを見られるため(理系、京都大学)

ES、面接の内容が掲載されており参考にしていた。年度ごとに絞り込み検索することができて使いやすかった(理系、日本大学)

面接の体験記が具体的だったため。実際に面接で回答した内容を見られるサイトはほかになかった(文系、明治大学)

前に面接を受けた人の回答内容が詳細に書かれており、非常に参考になった(理系、東京都立大学)

過去の就活スケジュールや体験談を閲覧することで安心感を得ていたため。また、就活速報を活用し、周りの就活生の動向を確認することができたため(理系、名古屋工業大学)

他の就活サイトの掲載内容は過去のものが多いが、就活速報はリアルタイムのためとても便利だった(文系、共立女子大学)

【リクナビ】

志望する業界で、インターンなどを直接予約できる企業数が比較的多かったから(理系、徳島大学)

一番身近だったから。インターンの申し込みで一番使いやすいと感じた(文系、南山大学)

志望する企業が同サイトで応募受け付けをしていたから(文系、大阪大学)

官公庁の掲載が多いため(文系、高崎経済大学)

OpenESが使えるから(文系、関西大学)

マイページ登録に便利(理系、東京都立大学)

情報量が多いから(文系、明治大学)

参加時期で異なるインターンシップの参加目的

 次は、応募先企業を探す際に重視する項目(複数回答)を文系・理系別に確認しましょう。
 文系・理系ともにトップは「給与・待遇」で、文系が57%、理系が65%と、ほぼ3分の2の学生が挙げています[図表5]。文系では、2位「休日・休暇・残業」(53%)、「福利厚生」(51%)と続き、ここまでが5割以上となっています。「仕事内容」は48%で4位、次いで「社風・企業文化」(46%)、「社員の人柄・対応」(41%)が続きます。
 一方、理系では、2位は「福利厚生」で61%と6割を超え、次いで3位「仕事内容」が57%で続きますが、4位は「休日・休暇・残業」で43%となっており、3位の「仕事内容」とは14ポイントも差があります。理系は文系ほど休日や残業時間へのこだわりが強くないようです。研究室での曜日にこだわらない、長時間にわたる研究経験が起因しているのかもしれません。その他、文系との違いを見ると、「専攻・自分の強みとの関連性」が文系の12%に対して27%、「製品・サービス」が文系の10%に対して20%と、それぞれ2倍以上になっています。

[図表5]応募先企業を探す際に重視する項目(複数回答)

図表5

 インターンシップを選ぶ際に重視する点(参加目的)について、実施時期別(夏期、秋・冬期)に確認してみました[図表6]。夏期インターンシップで最も重視されている点(複数回答、以下同じ)は「企業理解が深まるか」(74%)が最も多く、次いで「業界理解が深まるか」(60%)、「本選考への優遇があるか」(48%)と続きます。一方、秋・冬期インターンシップで最多は「本選考への優遇があるか」で67%となっており、夏期と比較すると20ポイント近く増えています。「採用直結型か」も夏期の17%から25%へと増えるなど、参加時期によってインターンシップに求めるものが、 “企業・業界理解促進” から “選考上のメリット” へと変化していることがうかがえます。来年以降、インターンシップ募集の際には、プログラム内容および募集要項での告知事項について、留意する必要がありそうです。

[図表6]インターンシップ参加先の選定で重視する点(夏期と秋・冬期比較、複数回答)

図表6

セミナー等への参加時期は理系が2~3カ月早い

 次に、個別企業が開催するセミナー・会社説明会(以下、セミナー等)への参加状況を見ていきます。
 まずは、セミナー等への参加社数からです。文系・理系ともに最も多いのは「10~14社」で、文系(22%)・理系(21%)ともに2割を超えます[図表7]。文系では、次いで「30社以上」が19%と2割近くあり、「4~6社」(17%)、「20~24社」(12%)と続きます。“10社以上” とする割合は合わせて65%を占めます。
 一方、理系を見ると、「10~14社」の次は「4~6社」(16%)、「7~9社」(15%)と続き、「1~3社」「0社」がともに1割程度となっています。“10社以上” は48%と半数に満たず、文系のほうがより積極的にセミナー等に参加している様子がうかがえます。

[図表7]個別企業セミナー・説明会の参加社数

図表7

 セミナー等に参加した時期(複数回答)について、文系では「2023年5月以前」の13%を皮切りに、毎月徐々に参加率が高まり、「2023年8月」に3割台、「2023年12月」に半数以上、「2024年2月」に6割に達し、「2024年3月」には65%でピークを迎えます[図表8]。その後、「2024年4月」には42%、「2024年5月」には25%と急落しています。
 一方、理系では、「2023年5月以前」は15%で文系とそれほど変わらないものの、「2023年6月」には3割台、「2023年7月」には4割台となり、早くも「2023年10月」には52%で半数超に達します。結果的にピークは「2023年12月」の56%と「2024年1月」の55%で、文系がピークを迎える「2024年3月」には36%と3割台にまで低下し、「2024年5月」には1割程度となっています。セミナー等への参加社数では文系が理系を上回っていましたが、参加時期では理系が文系よりもずいぶん早く動いていたことが分かります。

[図表8]個別企業セミナー・説明会への参加時期(複数回答)

図表8

 理系学生の応募形式の特徴である「推薦応募」の活用状況についても確認してみましょう。かつて「理系=推薦応募」が就職活動の王道のように言われていた時代もありましたが、最近の推薦応募の活用状況はどうなっているのでしょうか。
 「推薦応募のみ」と回答した学生はわずか2%にとどまり、「推薦応募も自由応募もした」の17%と合わせても、推薦応募を活用した学生は2割にも満たないことが分かりました[図表9]。「自由応募のみ」が78%で圧倒的多数を占めており、もはや理系においても自由応募が一般的な応募形式となっているようです。
 かつて企業は大学(教授)との関係を非常に重んじたために、よほどのことがない限り推薦応募の学生を不採用とすることはありませんでした。大学もそれが分かっていたので、優秀な学生とそうでない学生を抱き合わせで推薦応募させ、企業側は渋々両者とも採用する――などという話をよく耳にしました。学生にしてみれば、大学で推薦枠さえ取ることができれば、就職活動は実質的に終わったに等しい状況でしたから、大きく様変わりしたものです。

[図表9]推薦応募の活用状況(理系)

図表9

エントリーシートの作成・添削で活用される生成AI

 2024年卒学生から徐々に広がってきている就職活動での生成AI(OpenAI社のChatGPTなど)の活用ですが、25年卒学生についてはどうでしょうか。文系では、「活用しない」が6割に上る中、「すべての応募企業に対して活用している」は6%にとどまるものの、これと「一部の応募企業に対して活用している」の28%を合わせた活用派は34%と約3分の1に上っています[図表10]。「活用するか迷っている」も6%あり、さらに増える可能性があります。
 一方、理系では、「活用しない」が最も多いものの49%と半数に満たない状況で、「すべての応募企業に対して活用している」の11%と「一部の応募企業に対して活用している」の36%を合わせると48%となり、活用派と活用しない派はほぼ半々で拮抗(きっこう)しています。テクノロジーの活用は、やはり理系のほうが進んでいるようです。
 全体で見ると、現状では「活用しない」が55%でやや多いものの、ビジネス上でも生成AIの活用が一般的になってきている現状を踏まえると、今後も活用する学生はさらに増えることが予測されます。

[図表10]就職活動での生成AIの活用状況

図表10

 就職活動に生成AIを活用している学生を対象に、その活用シーン(活用用途)(複数回答)を見ると、文系では「採用選考のエントリーシートの作成・添削」が最多で53%、次いで「インターンシップのエントリーシートの作成・添削」が42%となり、エントリーシートの作成・添削に活用する学生が圧倒的に多いことが分かります[図表11]。「自己分析」(42%)、「企業研究」(39%)も「インターンシップのエントリーシートの作成・添削」と同程度の高い割合となっています。
 理系ではエントリーシートの作成・添削のための活用がさらに進んでおり、インターンシップで68%、採用選考で67%といずれも7割近い活用度となっています。ただ、「企業研究」(31%)、「自己分析」(28%)などその他の用途については、エントリーシートの作成・添削ほど活用されておらず、逆に文系のほうが理系よりも活用が進んでいる状況です。

[図表11]就職活動での生成AI活用シーン(複数回答)

図表11

面接先を絞り込む理系

 次は、エントリーシートの提出社数を文系と理系で比べてみましょう。文系・理系ともに最も多いのは、セミナー等の参加社数と同じく「10~14社」で、文系が22%、理系が19%とともに2割程度です[図表12]。文系ではこれに「20~24社」「30社以上」がそれぞれ18%で続き、“10社以上” が合わせて70%と、セミナー等の参加社数の割合(65%)を上回ります。「7~9社」(12%)と「4~6社」(11%)はともに1割程度です。
 一方、理系を見ると、「10~14社」の次は「1~3社」「4~6社」がともに17%、「7~9社」が12%で続きます。「15~19社」は11%となっているものの、20社以上の区分はすべて1桁台にとどまり、“10社以上” は合わせて53%と文系を20ポイント近く下回っています。セミナー等への参加と同様に、文系のほうがより多くの企業にエントリーシートを提出している様子がうかがえます。

[図表12]ES提出社数

図表12

 面接を受けた社数について見ると、文系はこちらも「10~14社」が23%で最も多い一方、理系は「4~6社」が29%で最も多く、次いで「1~3社」の25%など、“6社以下” が56%と半数以上となっています[図表13]。文系の6社以下の割合は33%と理系よりも23ポイントも低く、理系のほうが面接先企業をより絞り込んでいることがうかがえます。

[図表13]面接を受けた社数

図表13

 [図表14]は、[図表7(セミナー等の参加社数)、12(ES提出社数)、13(面接を受けた社数)一つにまとめたものです。グラフの形を見ると、文系の「セミナー等」と「ES」はほぼ同様の傾向を示し、「面接」では “20社以上” の合計割合が大きく減少する代わりに、“1~9社” の合計割合が大きく増えていることが分かります。
 一方、理系では、「ES」提出の時点で「1~3社」が増え、「面接」では「1~3社」がさらに増えるとともに、「4~6社」も大きく増えている様子が分かります。企業の採用ニーズが文系よりも高い理系において、エントリーシートの通過率が文系より極端に低いことは想定できず、学生側が面接社数を絞り込んでいると見てよいでしょう。また、3月時点の本調査で理系のほうが文系よりも早期の内定率が高いことが明らかになっており、面接に進む前に既に他社から内定を獲得した学生が面接を辞退したことにより、表に出てくる面接社数が抑制されているのではないかとも推測できます。

[図表14]セミナー等・ES・面接の社数比較

図表14

対面型にシフトする最終面接

 面接を受けた時期について、文系では「2023年9月」に10%となった後、徐々に受験率が高まり、「2023年12月」には約3割に達します[図表15]。「2024年1月」に4割台、「2024年2月」に5割台となり、「2024年3月」には72%でピークを迎えます。以降、「2024年4月」は62%、「2024年5月」には50%と減少していきます。
 一方の理系は、「2023年10月」に15%で文系の割合に追いつくと、「2023年12月」に41%、「2024年1月」に54%と文系よりも速いペースで増えていき、「2024年2月」「2024年3月」にはともに62%でピークとなります。その後「2024年4月」に47%、さらに「2024年5月」には30%とピーク時の半分以下に大きく減少します。採用面接を受ける時期は、理系のほうが先行する傾向が見られ、採用ニーズの高い理系人材の獲得に先行して注力する企業側の動きが影響しているものと推測されます。

[図表15]面接を受けた時期(複数回答)

図表15

 最後に、面接の実施形式について確認します。一次面接における「オンライン面接」と「対面型面接」の割合をまとめたものが、[図表16]です。「すべて対面型面接」は、文系・理系ともに4~5%しかなく、「対面型面接のほうが多い」も文系で15%、理系で8%にとどまり、両方を合計した “対面派” は1~2割程度となっています。一方、「すべてオンライン面接」は文系で23%、理系では45%と半数近くに上り、「オンライン面接のほうが多い」は文系で46%と半数近を占め、理系でも32%と3割を超えるなど、両者を合計した “オンライン派” は文系で70%、理系では77%と “対面派” を大きく上回っています。“対面型への回帰” が叫ばれながらも、面接人数の多い一次面接では会場や面接官の手配などの手間を考えると、企業はまだまだオンラインの活用を捨て切れないようです。遠方からの応募者の負担に対する配慮もあるのでしょう。

[図表16]受けた一次面接の形式割合

図表16

 一方、最終面接の実施形式を見たものが、[図表17]です。グラフの色合いが[図表16]の一次面接とは全く異なることが分かります。「すべて対面型面接」は、文系で38%、理系でも28%とそれぞれ最も多く、「対面型面接のほうが多い」も文系で30%、理系で24%を占め、両方を合計した “対面派” は、文系では68%と7割近く、理系でも52%と過半数に達しています。コロナ禍では、最終面接までのすべての面接をオンライン型に振り切った企業が多く見られましたが、内定辞退率の上昇をはじめ、企業・学生ともに相手の熱量を測りかねたり、オンラインでの人物の見極めの難しさを実感したりした反省から、対面型への揺り戻しがますます加速しているようです。
 「すべてオンライン面接」は文系で6%、理系でも13%にとどまり、「オンライン面接のほうが多い」は文系で10%、理系でも16%となっており、両者を合計した “オンライン派” は、文系で16%、理系ではやや多いものの29%と3割を下回っています。理系のほうが “オンライン派” が多いのは、実験・研究等に忙しい理系学生に配慮する企業が一定数あるためと思われます。活用度は2割に満たなくなったとはいえ、推薦応募も重要な採用チャネルであることに変わりはなく、遠方からの応募者等とともに受験の負担軽減を図る観点から、最終面接までオンライン対応としている企業は少なくないでしょう。

[図表17]受けた最終面接の形式割合

図表17

 次回も、引き続き「2025年新卒学生の就職活動動向調査(6月)」の結果を紹介します。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/