ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング創立者兼社長
A5判/194ページ/1800円+税/経団連出版
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ DXやリスキリングを推進する企業が増える中、上司が高スキル人材を適切にマネジメントできなければ、そうした取り組みも最大限の効果を発揮することはできない。ではDX推進に適した理想のマネジメントに求められるものとは何だろうか。この問いに著者は「サーバント・リーダーシップ」、つまり上司が謙遜の立場で部下のために尽くす態度であると答える。本書は、経営コンサルタントとして日米で多数の企業をクライアントに持つ著者が、現代の日本のマネージャーに必要な考え方とスキルを、過不足なく網羅的にまとめたものである。
■ 第1~3章では、アメリカとの比較から日本のマネージャーの課題を指摘し、サーバント・リーダーの必要性や立ち居振る舞い、権限委譲(デレゲーション)による部下のモチベーション向上の手法等を解説する。第4~6章では、ネガティブとポジティブ両面のフィードバックの重要性やその進め方、コーチング理論等を具体的に紹介。第7章では、日本の人事評価制度の問題点を分析し、考課表や職務記述書のサンプルを示した上で、効果的な目標設定や評価面談への取り組み方を提案する。第8章では、ダイバーシティとインクルージョンの重要性を踏まえ、心理的安全性の確保を通じてチームの多様性を尊重することの意義を語る。第9章では、イノベーションを生む組織づくりを進める「フェイル・ファスト」の姿勢を取り上げ、失敗を恐れず挑戦し続けることを推奨する。
■ 本書は2003年に出版された『ソフト・マネジメントスキル こころをつかむ部下指導法』(日本経団連出版)の改訂版であり、DX等の今日的課題を盛り込みつつ内容の見直しを図り、現代の日本が抱えるマネジメント課題解決への新たなアプローチ・方法論を提示している。DX推進企業に限らず、チームを率いる立場にあるマネージャーやリーダーに手に取ってもらいたい。
DX時代の部下マネジメント 「管理」からサーバント・リーダーシップへの転換 内容紹介 デジタル・トランスフォーメーション(DX)は、日本のビジネスにおける重要なキーワードです。DX導入により、仕事の内容や進め方が大きく変化し、それらの動きと呼応するように、従業員の専門性を促進するためにジョブ型人事を導入する企業も増えています。 これほどの大きな変化が起きているにもかかわらず、マネージャーが部下を管理する方法が何十年も前とあまり変わっていない企業も少なくありません。それが、日本企業の弱点ともいわれています。日本の労働生産性や従業員エンゲージメントがほかの先進国より低いこと、長時間労働が解消できないこと、多岐に及ぶハラスメント問題も、深刻さが増加しているメンタルヘルス問題や過労死問題も、管理方法と無関係とはいいきれません。 DXを導入し、イノベーションを起こすにあたっては、従業員が新しい現実を受け入れ、古い習慣を改め、それまでの思考法と働き方を変えることが必要です。変革を進めるなかで部下をサポートしながら動機づけできる上司も必要です。時代の変化に対応し、部下の管理方法を改善することが日本のマネージャーにとって急務となっているのです。 DXに適したマネジメントスタイルに「サーバント・リーダーシップ」があります。権限を委譲して部下に仕事を任せ、仕事の詳細に干渉したりコントロールしたりしない姿勢をとる一方で、上司はビジョンを示し、仕事の邪魔になる障壁を取り除くように働きかけて働きやすい環境を整え、コーチングとフィードバックを部下を通じて育成していくものです。スキルというより態度といったほうがよいかもしれません。「部下は仕事をこなす能力をもっている、だから適切な環境をつくってサポート体制を整えておけば、仕事を任せても大丈夫」という前提にもとづいています。 本書では、現在の日本のニーズに合致しているサーバント・リーダーシップを身につける具体的手法を紹介します。 |