2024年10月11日掲載

BOOK REVIEW - 『アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値』

鈴木仁志、濱田麻里 著
株式会社ハッカズーク 
A5判/256ページ/2000円+税/日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 著者が所属する株式会社ハッカズークでは、企業とアルムナイ(退職者)をつなぐ支援を行っており、「アルムナイ」という言葉をあえて使うことが「日本社会全体で『別れを資産に変える』きっかけに」なることを意図しているという。そして、いまだに「退職者=裏切り者」という固定観念がある日本企業には、退職者との関係性を築く力が必要だと指摘する。第1章ではアルムナイとの関係構築が注目されている理由を、日本の雇用慣行の変化や人的資本経営への動きなどから解説する。

■ 退職しても持続する「終身 “信頼” 関係」を築く条件、さらに関係構築のステップとポイントは第2・3章で詳解する。アルムナイジャーニーの作成や、企業として目指す姿とのギャップを埋める計画・運用など具体的なステップが理解できる。第4章では「参加者の多様性」を維持するための留意点を示しつつ、アルムナイ・ネットワークを持続させるポイントを示す。さらに第5章、第6章では日本の大手企業のアルムナイらへのインタビューを元に、関係構築のために行っている工夫や、企業とアルムナイ双方にとっての価値を具体的に明らかにする。

■ 最終章では同社が理想とする企業と個人の関係性を示す。在籍中に築き上げた関係をその人材の退職によって終わらせてしまうということは、企業と退職者本人、双方にとって大きな損失であると著者は述べる。アルムナイに対する理解を深めたい、また、アルムナイとの関係づくりを進めていきたいというビジネスパーソンにお薦めの一冊だ。

アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値

内容紹介
退職で関係を終わらせることは大きな損失だ。

 「退職」や「退職者」という言葉にどのような印象をお持ちでしょうか。「退職者=裏切り者」と捉える向きもあるようです。しかし、近年では退職者を「アルムナイ」と呼び、良い関係を維持し、「社外の貴重な人的資本」として捉える考え方が、経済界において急速に広がってきています。

アルムナイと良い関係性を構築・維持できれば、イノベーションの創出、顧客基盤の拡大、優秀な人材の獲得・育成、アルムナイ採用など、あらゆる面で企業の競争力を強化する、計り知れない価値を持ちます。アルムナイと元企業・元同僚(上司)との経済的な年間取引額を「アルムナイ経済圏」として規模を推計すると、年間1兆1,500億円程度という調査結果さえあります(パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」2020年)。せっかく築き上げた関係を、その人材の退職によって終わらせてしまうということは、会社と退職者本人、双方にとって大きな損失なのです。

本書籍では、「アルムナイ」人材について整理し、退職者との関係性を築く「アルムナイ・リレーションシップ」について詳しく説明します。アルムナイと良い関係性を構築・維持する具体的な方法、退職で終わらない「企業と個人の新しい関係」の実現のステップを学ぶことで、「退職による損失がない社会の実現」に向けた一歩を、一緒に踏み出しませんか。