2024年10月11日掲載

BOOK REVIEW - 『キャリアブレイク――手放すことは空白(ブランク)ではない』

石山恒貴、片岡亜紀子、北野貴大 著
法政大学大学院政策創造研究科教授、早稲田大学グルーバルエデュケーションセンター講師、
一般社団法人キャリアブレイク研究所代表 
A5判/240ページ/2600円+税/千倉書房 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ キャリアブレイクとは「今まで中心的に活動してきたキャリアの役割を手放すことによって、新しいキャリアの役割に向けて自分と社会を見つめなおしている期間」と、本書にて “新定義” している。ここでいうキャリアとは、「ワークキャリアを包含する、仕事に限定されない人生全体を射程とするライフキャリア」を前提としている。単に仕事を休んだり辞めたりすることではなく、キャリアを手放したという実感とともに自分を見つめなおす機会を設けることだといえる。本書では、著者らの経験を交えつつ、キャリアブレイクについて解説し、その文化を紹介している。

■ 第1・2章ではキャリアブレイクの定義や背景を説明する。リカレント教育やサバティカル休暇等を例に挙げ、それらとの相違点から解説。また、日本的雇用の特徴から日本社会において空白期間が受け入れられにくい背景を考察している。第3・4章ではそれぞれ著者の実体験を語っており、第3章ではキャリアブレイクを研究するに至った背景を、第4章では「キャリアブレイク研究所」の誕生と運営からみえてきたことを紹介する。第5章では複数事例から各人の葛藤や自分を見つめなおすプロセスを通じ、キャリアブレイクへの理解を深める。第6章では著者3名による対談で、今後の展望に言及している。

■ 最近ではメディア等で取り上げられることも多いが、著者が「キャリアブレイク」と出合った10年前にはそうした概念を知っている人はほとんどいなかった。この変化は、日本社会において「手放すこと」の価値に共感する人が増えたからではないかと著者は述べる。日々、多くの働く人と関わる人事担当者としても、キャリアを歩む当事者としても、学術的に分析された本書によって視野が広がり、新しい価値に気づくきっかけとなるかもしれない。

キャリアブレイク――手放すことは空白(ブランク)ではない

内容紹介
日本の息苦しさを緩和する1冊。

離職休職の期間は、人生を不利にするブランク期間と呼ばれていた。
実際は、その空白期間には価値があり、まさにキャリアブレイクだった。

世界では一般的であるキャリアブレイクとはなにか。
その実態と、価値をキャリアブレイク実践者8名の詳細な分析から提示。
くわえて国際比較、歴史的背景、雇用システムの位置づけ、キャリア理論上の位置づけからも解説。
日本初のキャリアブレイクを学術的に分析した書籍。

【目次】
第1章 キャリアブレイクの定義(石山恒貴)
第2章 キャリアブレイクの背景(石山恒貴)
第3章 キャリアブレイクを支える理論(片岡亜紀子)
第4章 キャリアブレイク研究所の事例(北野貴大)
第5章 キャリアブレイクの実態とプロセス(石山恒貴)
第6章 共通プロセスの解釈とキャリアブレイクの方向性(石山・片岡・北野)