賃上げ初の1万円超え 月額平均、3年連続上昇 物価高で実質賃金は低迷

 厚生労働省が28日発表した2024年の賃金引き上げ実態調査で、1人当たりの基本給など月額所定内賃金の全産業平均引き上げ額は、比較可能な1999年以降、初めて1万円を超えた。前年より2524円増の1万1961円だった。ただ物価高騰を考慮した実質賃金は低迷が続き、苦しい家計の改善は見通せない。

 春闘での賃上げや最低賃金アップを反映し、前年比の増加率4・1%も過去最高。金額、率ともに3年連続で上昇した。

 一方、厚労省の毎月勤労統計調査では実質賃金が今年5月まで過去最長の26カ月連続マイナスを記録。6、7月はプラスとなったが8月(確報)は0・8%減と再び減少に転じている。

 実態調査は7~8月、従業員100人以上の企業を対象に行い、1783社が回答した。

 賃上げを実施、または予定する企業は前年から2・1ポイント増の91・2%だった。業種別では「鉱業・採石・砂利採取業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「医療・福祉」が100%。「建設業」99・7%、「製造業」98・7%と続いた。最も低かったのは「運輸・郵便業」の74・4%だった。

 賃金改定で最も重視したのは「企業の業績」が最多の35・2%で、「労働力の確保・定着」14・3%、「雇用の維持」12・8%と続いた。「雇用の維持」は前年から1・2ポイント上昇しており、厚労省の担当者は「人手不足が続く中、人材流出を防ぐ狙いがあったとみられる」と分析する。

 賃上げを実施、または予定する企業を労働組合の有無で見ると、労組のある企業は97・9%だったのに対し、ない企業は89・1%にとどまった。

(共同通信社)