106万円の壁26年撤廃へ 厚生年金、パート加入拡大 企業判断で保険料肩代わり

 厚生労働省は、会社員に扶養されるパートら短時間労働者が厚生年金に加入する年収要件(106万円以上)を2026年10月に撤廃する方向で調整に入った。保険料負担を避けるため働く時間を抑制する「106万円の壁」とされてきた。勤務先の従業員数が51人以上と定めている「企業規模要件」も27年10月に撤廃し、週の労働時間が20時間以上の人は年収を問わず厚生年金に加入することになる。関係者が5日明らかにした。
 老後の給付が手厚くなる半面、保険料負担で手取り収入が減るといった課題がある。そのため厚労省は年収156万円未満の人に限り、本来は労使折半で加入者が払うべき保険料の一部を企業の判断で肩代わりできる仕組みを検討。企業が肩代わりする割合は任意で設定できるが、全額を負担することは認めない。肩代わりを受けても将来の年金額は変わらない。26年4月からの時限的な措置とする。
 ただ、この措置は中小企業を中心に「経営体力のある大企業しか活用できず、待遇格差を招く」との批判があり、負担増となる企業への支援策も用意する方針だ。
 現状ではパートら短時間労働者は、四つの加入要件を全て満たすと厚生年金に加入。うち年収要件と企業規模要件は撤廃し、残る「週の労働時間が20時間以上」「学生ではない」との2要件は維持する。週20時間以上働くと保険料が発生し、「時間の壁」が就労抑制の要因となる恐れもある。
 従業員5人以上の個人事業所の厚生年金加入も29年10月に広げる。個人事業所で働く人は現在、製造業や建設業など17業種に限って厚生年金に加入。これを飲食業や宿泊業、理美容業など全ての業種に拡大する。5人未満の個人事業所は検討課題とする。
 要件の見直し全体で、新たに200万人が加入する見通し。与党との調整を経て、来年の通常国会に年金制度改革の関連法案提出を目指す。
(共同通信社)