2024年12月13日掲載

BOOK REVIEW - 『多様化する人材と雇用に対応する ジェンダーフリーの労務管理』

小岩広宣 著
特定社会保険労務士 
A5判/272ページ/2500円+税/日本実業出版社 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 多くの職場では現在も潜在的に、「男らしさ」「女らしさ」といった昔ながらの規範に基づいて社員を管理していることが多いのではないだろうか。本書は、ジェンダーを取り巻く労務管理の課題と対策を取り扱ったものであり、性的マイノリティを対象の中心に据えつつ、雇用社会においてはマイノリティといえる女性や、“有害な男らしさ” により息苦しさを感じる男性などにも目配りした内容となっている。

■ 第1章では、「ジェンダー」「LGBTQ」「ノンバイナリー」とは何かを解説しながら、ジェンダーと労務管理の全体像を押さえる。第2~7章において「募集・採用・労働契約」「賃金・福利厚生・施設管理」「服務規律・服装規定」「ハラスメント・懲戒」といった分野ごとに、マイノリティが直面する課題や旧来のジェンダー規範によって生じる問題と、会社が取るべき対策や考え方を整理している。法律婚以外の同居家族に対する手当の支給や、男女別のドレスコードの妥当性など、取り上げるテーマはどの職場でも課題となり得るものばかりだ。

■ 第2章以降では、各章の末尾で「男性社員」「女性社員」「管理職」「経営者」(第7章は「管理職」「経営者」)のそれぞれに向けて、筆者が伝えたい各テーマへの向き合い方や労務管理のポイントを端的にまとめている。例えば、性的マイノリティが配属された場合の管理職としての向き合い方、トランスジェンダー女性による社内トイレ使用に関する女性社員の捉え方など、職場のマジョリティ側に求められる視点や受け止め方について触れている。本書を活用することで、ジェンダーにとらわれることなく、社員の個性や資質に合った働き方が実現できる環境を整備してほしい。

多様化する人材と雇用に対応する ジェンダーフリーの労務管理

内容紹介
■「多様化する人材」の労務管理をわかりやすく解説■

多様性やジェンダー問題への意識の高まりとともに、「男らしさ」「女らしさ」といった思い込みや偏見を解消する具体的な取り組みが、大企業に限らず、中小・零細企業の現場でも問われるようになっています。

経営者や人事担当者、部下を持つ管理職層に対し、既存の労務管理をめぐるルールをアップデートすることが求められているのです。

本書は「労務管理」をテーマにした本ですが、一般的な本ではほとんど触れられていない
・ジェンダーや性的マイノリティ、多様性をめぐる労務管理への対応
・今後の社内コミュニケーションに必要な知識とステップ
などについても取り上げている点が大きな特徴となっています。

経営層や人事労務担当者の実践的な参考図書になることはもちろん、管理職層のテキストとして活用することも可能です。

著者は、一般社団法人ジェンダーキャリアコンサルティング協会代表理事を務めているほか、ジェンダー法学会、日本ジェンダー学会、ジェンダー史学会の会員であるなど、ジェンダーやダイバーシティ分野について業界内で圧倒的な強みを持つ特定社会保険労務士の小岩広宣氏。

募集・採用、賃金、福利厚生、施設管理、服務規律、職場のドレスコード、ハラスメント、懲戒、退職、キャリア形成、相談窓口など、労務の課題と実務の最適解を、ジェンダー問題に強い専門家ならではの鋭い視点で、わかりやすく解説しています。