2024年12月13日掲載

BOOK REVIEW - 『イノベーションを生み出すチームの作り方 成功するリーダーが「コンパッション」を取り入れる理由』

伊達洋駆 著
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役 
四六判/346ページ/2000円+税/すばる舎 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 現代ビジネスにおいて、イノベーションは必須要素だが、成功までにはさまざまな障害が立ちはだかる。本書では、イノベーション成功の秘訣(ひけつ)として、一般的に「思いやり」とも訳される「コンパッション」を重視しており、イノベーションの遂行と実現にどのように寄与するのかを、全4章にわたって解説している。

■ 第1章ではイノベーションを生み出す難しさについて、その根源となるアイデアに着目し「生成」「推進」「実現」の3段階を背景に検討する。アイデアが革新的であるほど「推進」「実現」には多くの困難が伴い、それらを乗り越える武器として「セルフ・コンパッション」(自らの失敗や欠点を受け入れ、それが誰にでもあることと理解し、今この瞬間に集中すること)を挙げている。第2章ではセルフ・コンパッションのメリットと、それをどのようにイノベーションに生かすべきかの心構えや姿勢について触れる。第3章ではコンパッションがイノベーションに与える影響について、「上司に提案を全否定される」「部門間の連携不足による問題発生」など17のケースを基に考察している。

■ 第4章では四つの実践法を紹介している。例えば、セルフ・コンパッションを高める「二つの椅子」。方法は幾つかあるが、その一つでは紙に批判と思いやりを記述し、両方を見比べてバランスの取れた見方や行動計画を3枚目の紙に書き出すというもので、記述内容を視認でき、自己対話の実践として取り組みやすい。このようなコンパッション向上を意識し習慣化することで、イノベーターは大胆に、創造的に行動できるようになるという。チームリーダーのみならず、イノベーション実現への強い意志や願望を持つ人にとっても、成功に至るヒントを得られるだろう。

イノベーションを生み出すチームの作り方 成功するリーダーが「コンパッション」を取り入れる理由

内容紹介
生産性の高いチームは何が違うのか?
失敗を受け止め、困難な状況を乗り越えるチームで共有されていることとは――

「コンパッションがイノベーションを実現する」—この一見、不思議な組み合わせに、驚いた人も多いのではないでしょうか。

「イノベーションに思いやりなんて必要ない。重要なのは強さだ」と考える人もいるかもしれません。確かに、イノベーションを成功させるには、困難に立ち向かう不屈の精神が必要です。
とはいえ、その強さはどこから湧いてくるのでしょうか。コンパッションは、強さを生み出す源泉となります。
本書では、コンパッションの三つの要素(セルフ・カインドネス、コモン・ヒューマニティ、マインドフルネス)がどのようにイノベーションプロセスを支えるかを説明しました。

興味深いことに、コンパッションは実践次第で高められます。本書では、「二つの椅子」を使った対話法や、優しい友人からの声がけを想像する方法などを紹介しました。
ここで強調したいのは、コンパッションを高める方法を、ぜひ試していただきたいということです。本を読んで知識を得るだけでなく、行動に移してみてください。

コンパッションだけでイノベーションが実現できるわけではありませんが、従来のイノベーションの考え方にこの人間的な要素を加えることで、より前に進みやすくなるのではないでしょうか。
アイデアを思いついた時、それを実現しようとして壁にぶつかった時、逆境や困難に遭遇した時。そんな時に、本書を思い出し、自分自身や周囲の人々に対する思いやりの心を持つことで、次の一歩を踏み出す進むきっかけになれば嬉しく思います。(本書「おわりに」より)