福岡大学人文学部准教授
A5判/288ページ/2000円+税/日経BP
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 人間は社会的な動物であり、本当の意味で集団生活から離れることはできない。また、企業組織がそうであるように、大きな仕事は集団でないと成し遂げることが難しい。一方で、集団ならではのトラブルやストレスを抱える人も多いだろう。本書は、社会心理学、産業・組織心理学の専門家が、科学的な知識や論文を基に集団心理を解説。「集団浅慮」「社会的手抜き」といった普遍的な側面を押さえつつ、グローバル化やテクノロジーの発展がもたらした現代ならではの “チームが直面する課題” を取り上げ、問題に向き合うためのヒントとなる知識を伝授する。
■ 本書は3部構成を取り、各部のテーマに沿った “集団心理” に関する論点を全11章にわたって整理している。第1部では社会心理学の知見を中心に、負の集団心理について、職場にありがちなシチュエーションと絡めつつ詳説する。第2部では優れたチームを目指すに当たり、チームに必要な四つの要素を挙げ、チームワークやリーダシップを深掘りする。第3部では心理的安全性、ダイバーシティのメリット・デメリット、テレワークの効率性など、現代ならではの課題に切り込む。論文や研究結果に基づく知見を、イラストや図解を交えつつ平易な文章で説明しており読み進めやすい。各章の内容は独立しているため、興味のあるところから参照することも可能だ。
■ 職場の “暗黙の了解事項” や心理的安全性の低さに不満を持つ従業員は少なくないだろう。あるいは、人事担当者としてそうしたトラブル対応に当たったこともあるかもしれない。本書は、そうした問題に対して、人間や集団の心理を学ぶことにより、冷静な視点で現状を分析するための知識や考え方を与えてくれる。組織内のトラブル解決のヒントを得るだけでなく、集団心理を学ぶための教養書としても活用できる一冊である。
“集団心理” から読み解く 残念な職場から一流のチームまで だけどチームがワークしない 内容紹介 人は、集団になると愚かな決断をする 集団よりもひとりで働くほうが人間関係でもめないし、同調圧力に屈することもないし、サボる人も少ないでしょう。 |