青山学院大学経営学部教授
A5判/232ページ/2600円+税/日本法令
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 人手不足が深刻化する中、今働いている従業員にできるだけ長く勤務・活躍してもらうこと、すなわち人材定着(リテンション)を図ることは企業にとって非常に重要だ。本書はリテンション向上に寄与する可能性のある施策や、実際に成功したケースを取り上げ、人材流出を防ぐ組織マネジメントの手法について詳述する。
■ タイトルにある「リテンション・マネジメント」とは、人材定着を向上させるための組織の施策を意味する。本書前半では、リテンション・マネジメントについて、重視される背景や具体的な施策を解説する。従来若手社員を対象に行われてきた「定着管理」は、福利厚生管理や能力開発管理に限定されるマネジメントであったのに対し、リテンション・マネジメントに含まれる施策の範囲は人的資源管理のほぼ全領域に及び、非常に広いという。リテンション・マネジメントの対象とすべき退職を整理した上で、さまざまな調査結果から明らかになる離職理由の傾向、リテンション・マネジメントの実態と具体的な施策を論じ、若手社員を対象にした施策を深掘りしていく。
■ 本書後半では、リテンション・マネジメントにおける「働きがい」や「エンゲージメント」の重要性を明らかにし、管理職の役割を説く。さらに、人的資本経営とリテンション・マネジメントとの両立の重要性を述べる。人材不足への対応が迫られている介護職のリテンション促進や、次々と退職者が発生する「連鎖退職」の防止など、近年の人材マネジメントにおける課題も取り上げている。人材不足時代を勝ち抜く戦略的マネジメント手法として、自社でのリテンション施策を検討する担当者は読んでおきたい一冊である。
人事労務担当者のための リテンション・マネジメント 人材流出を防ぐ実践的アプローチ 内容紹介 日本では少子高齢化による人口減少と転職の一般化により、人手不足が深刻化しています。 本書は、リテンション・マネジメントの具体的施策や成功事例を紹介し、組織がどのようにリテンションを向上させられるかを解説。 |