2025年03月28日掲載

BOOK REVIEW - 『人材マネジメントの革新 理論を読み解くための事例集』

江夏幾多郎、石山恒貴、服部泰宏 編著
神戸大学経済経営研究所准教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、神戸大学大学院経営学研究科教授 
A5判/256ページ/3200円+税/千倉書房 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 働き方や人材マネジメントをめぐる状況は日々変化している。本書では、昨今の注目テーマについて、先進的な人事施策を展開する12の企業・組織の事例をインタビューから考察する。執筆陣は、若手からベテランまで総勢25人の研究者。各社の取り組みを詳細にまとめるだけでなく、関連する理論的視座や個々の研究者の視点を織り込んでいる点が特徴だ。

■ 全12章で構成する本書では、章ごとにテーマを設定し、該当の施策を展開する企業・組織の事例を取り上げている。例えば、第1章では【人事システム】について株式会社SmartHRを、第7章では【エントリー・マネジメント】について住友商事株式会社を、第9章では【人材育成】についてソフトバンクアカデミア(ソフトバンクグループ株式会社)を紹介するなど、テーマも企業・組織も多岐にわたる。企業の人事管理に関する諸施策という “社会的現実” を理論的に捉えることに注力しつつも、特定の理論の枠組みに当てはめて考察することなく「事例のありのままの姿を描く」よう意を用いることで、読者に “現実” と “理論” を知り、それらの分断や融合に触れ、その面白さを体感してもらう——ことが狙いだ。

■ 本書は研究書という位置づけではあるものの、「人事管理に関する研究や学習のみならず、実務に直接的または間接的に関わっている方々、つまり人事管理に関心を持つ人すべて」に向けて書かれたものであり、実務に当たる人事担当者にも参考になるだろう。各社の先進的かつ特徴的な取り組みは自社への応用を検討できるだろうし、事例から導き出される理論は人事労務の業務に生かせるに違いない。実務家とは異なる “研究者” 視点の事例紹介だからこそ、新たな発見や気づきが得られるのではないだろうか。

人材マネジメントの革新 理論を読み解くための事例集

内容紹介
アルムナイ、ジョブ・クラフティング、降職制度、副業など……

先進的かつ特徴的な人事管理を実践する12の企業・組織の取り組みを気鋭の研究者が丹念にインタビュー。
理論的視座も紹介しつつ、その実像に迫る!

目次
第1章【人事システム】人事機能の部門化とその発展(株式会社SmartHR)
第2章【社員等級制度】外部労働市場の流動性への対応と内部労働市場のニーズの両立への挑戦(株式会社メルカリ)
第3章【雇用区分制度】働き方に制約がある従業員の中核的活用(イオンリテール株式会社)
第4章【高齢者雇用】キャリア後期の従業員の働き方の模索と試行(村田機械株式会社 研究開発本部)
第5章【副業・兼業】副業から「福」業へ―社会・会社・個人をつなぐ副業制度―(ロート製薬株式会社)
第6章【労使関係】労働組合のアイデンティティ再形成による労使関係の進化(三井物産労働組合/Mitsui People Union)
第7章【エントリー・マネジメント】多様な労働市場からの人的資源流入のマネジメント(住友商事株式会社)
第8章【配置転換】人材配置の最適化を可能にする人事施策と組織風土(トラスコ中山株式会社)
第9章【人材育成】自己変容する学習共同体を通じた次世代リーダーの育成(ソフトバンクアカデミア)
第10章【パフォーマンス・マネジメント】業績と成長の循環を生む人事評価コミュニケーション(コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社)
第11章【グローバルHRM】国際的な人事管理の脱中心化に向けた取り組み(アステラス製薬株式会社)
第12章【データ活用】適材適所を可能にする組織体制とテクノロジー(株式会社サイバーエージェント)